日本人初のフェンシング競技の五輪メダリストで、現在は日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏が、“マイナースポーツ”のビジネス化に向けて大胆な挑戦を続けている。2018年12月9日に開催された「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」のチケットは、同9月1日の発売開始からわずか40時間で完売した。エンタメ性にこだわり、ロンドンのグローブ座を参考に設計され主に舞台公演で使われる東京グローブ座で開催した。S席は5500円と、マイナースポーツとしては“あり得ない”価格設定だった。

 2018年10月には、日本フェンシング協会の組織基盤の強化のために、転職サイト「ビズリーチ」で副業・兼業限定の条件で戦略プロデューサー4職種を公募。1127名の応募の中から4名のビジネスのプロ人材を採用した。2017年8月に会長に就任以来、数々の新しい取り組みを仕掛けてきた太田氏は、今何を考え、次に何を仕掛けるのか。(聞き手:内田 泰=日経 xTECH)

2018年12月9日に開催された「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」の様子
(写真:竹見脩吾)
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2018年12月の「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」は、S席が5500円、A席が4000円、B席が2500円という、かなり強気の価格設定でしたが、約700席が40時間で完売しました。東京グローブ座というスポーツ興行ではあまり使われない会場を選んだことにもその理由があると思いますが、今回得られた知見は何でしょうか。

太田 東京グローブ座を選んだ原点には、どうやったら観客が非日常的な体験ができ、選手がかっこよく見えるかを考えたことがあります。収益化というのはその先にあるもので、まずはコンテンツが良くなければどうしようもない。選手をかっこよく見せるには照明が大事です。既存の建物で照明設備があることが前提になりました。

公益社団法人・日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏。国際フェンシング連盟副会長を兼務。2008年の北京五輪でフェンシング男子フルーレ個人に出場、日本人選手初の決勝戦に進出し銀メダルを獲得。2012年ロンドン五輪の男子団体で銀メダル。2015年の世界選手権では個人で金メダル。2017年8月に日本フェンシング協会の会長に就任。33歳

 そう考えると、これまでのように体育館で開催すると照明設備を持ち込まないといけない。最近では照明設備を備えたアリーナができたりしていますが、都心から離れた立地であったり、東京五輪に向けて建設中だったりして適当な場所が見つかりませんでした。こうした中で、フェンシングの新しい魅せ方ができないかということで東京グローブ座を選びました。

 さらに、どうせやる以上は素敵なことをやりたいと考え、大会ポスターの制作に映画監督・写真家の蜷川実花さんを起用し、それを見た人が“すごい”と感じるような写真を撮ってもらいました。

映画監督・写真家の蜷川実花氏が制作した「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」のポスター
(図:日本フェンシング協会)
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