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スポーツとイノベーション

閑古鳥から完売へ、フェンシング太田雄貴会長の大改革

マイナースポーツの挑戦(上)

2019/02/20 05:00

内田 泰=日経 xTECH

高単価で売れることを証明したかった

太田さんが会長に就任して初めて取り組んだ、2017年の全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦では、会場の駒沢体育館の約1500席(観戦料1000円)が埋まり、その前年の300人から観客動員を大きく伸ばしました。

太田 駒沢体育館で開催した2017年の大会は、2018年の2倍以上の約1500席が満員になりました。しかし、正直、“鬼”のように手売りしました。友達・後輩・先輩に「来てください」と頼みました。実は、70人と一番多く観客を連れてきてくれたのは小学校の先生をしている私の姉でした。小学生は無料でしたが・・・。

 このように、1年目はまずは営業、ひたすら営業に力を入れました。いきなり革新的な事をやっても人は集まらないと考えていたからです。なぜなら、人が来てくれなければイノベーティブなことをやってもそれが広く伝わらないからです。

 まず営業で人を集めた上で、お客さんが一定以上の満足を得てくれるように、LEDを使ってどちらの選手にポイントが入ったのかをわかりやすく伝える演出をしたり、ダンスパフォーマンスを入れたりしました。それを多くの人が口コミをしてくれて話題になりました。そこから1年が経ち、「今年は東京グローブ座で開催」ということを発表したことで、太田が何かをやるんではないかというファンの期待値をあおることができたと思います。

2018年の全日本フェンシング選手権大会の観客の主流は、リピーターだったのか、それとも新規だったのでしょうか。それは想定通りでしたか。

太田 実はこれが我々の課題の一つなのですが、観客の正しい属性情報を拾えていません。チケットの販売は外部にお任せしたためです。なので、2019年大会の一番の肝になるのは、データをしっかり集めにいくことです。

 2018年大会では、S席で5500円(手数料込みで6000円)という高単価でも売れることを証明するのが第一の目的でした。周囲からは「強気」とよく言われ、確かに不安もありました。

東京グローブ座で開催した「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」。ロンドンのグローブ座を模した外観で、張り出し舞台と観客席がステージを囲む3層の円形空間が特徴
(写真:竹見脩吾)
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2017年大会の観戦料は1000円でしたが、5500円という数字はどうやって決めたのですか。

太田 自分の中では価格のリミットが8000円と考えていました。8000円を超えるとお客さんが高いと思うのではないかと。例えば、劇団四季のミュージカルだと一般価格は9800円、会員価格は8800円です。この辺りの価格を参考にしながら、ちょっとお値打ち感を出すためには、手数料込みで6000円なら勝機があると考えました。

 そして東京グローブ座に実際に足を運んだ時、これなら絶対に文句が出ないなと思えるレベルの建物、設備、非日常感があったので、ここは強気で行こうと決めました。最前列の方の席なら、選手の息遣いやピスト(試合用のコート)を動くときの音も全部聞こえる距離感だったので、満足度は高くなると考えていました。

「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」では、横8m×縦3mの大型LEDビジョンをステージの背面に設置。選手の名前や得点、所属、身長、年齢、さらにリアルタイムの心拍数を表示して観客に緊迫感を伝えた
(写真:竹見脩吾)
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 実は、観客の半分近くはフェンシング関係者でした。これは、逆にうれしかったですね。なぜなら、フェンシング関係者用の席は用意しませんでしたし、関係者は財布のひもが固いのに、割引もなしに来てくれたからです。どんなことが行われるのか興味を抱いて来てくれたようです。