2025年までに国内のスポーツ産業の市場規模を、現在の5.5兆円から3倍近い15.2兆円に拡大することを目指す日本。この目標を実現するには、これまでスポーツとは縁遠かった他の産業の企業や人材がスポーツ産業に集まってくることが欠かせない。2018年10月に開催された「スポーツビジネス創造塾 第3期」(主催:日経BP総研 未来ラボ)には、さまざまな業界のビジネスパーソンが集い、4日間にわたってスポーツビジネスの未来について議論した。

 2017年10月、2018年5月に続いて3回目の開催となった創造塾では、「スポーツ×テクノロジー」をテーマにしたセッションで2人のキーパーソンが講演した。スポーツ庁で産業連携関連の政策に携わる津々木晶子氏(参事官(民間スポーツ担当)付産業連携係長)と、 GPSデバイスで市場をリードするオーストラリアのカタパルト(Catapult)の斎藤兼氏(ビジネス開発マネージャー)が登壇。津々木氏は、政府のスポーツへの取り組みやスポーツ庁が主導するオープンイノベーションの促進について、斎藤氏は、現在多くのスポーツで使用が進むGPSデバイスの取り組みを紹介した。両氏の講演の一部をお届けする。
「スポーツビジネス創造塾 第3期」の様子

一見遠い産業との融合がスポーツビジネスを拡大

 スポーツ庁の津々木晶子氏は、鹿屋体育大学を卒業後、日本体育協会やソシオ成岩スポーツクラブ、鹿屋体育大学東京サテライトキャンパスなどでの勤務を経て、2015年にスポーツ庁の設立と同時に入庁した人物である。同氏は「スポーツオープンイノベーション、プラットフォームの形成に向けて」と題し、スポーツ庁がどのようにスポーツを成長産業化させようとしているのか、その取り組みを紹介した。

 日本のスポーツ産業の市場規模は、2012年時点で5.5兆円だった。この数字は、そこから遡ること10年前の2002年時点では7兆円で、実は日本のスポーツ産業は縮小傾向にあったのである。同時に、米国や英国との差も拡大の一途が続いている。

 このような背景から、スポーツ庁はスポーツ産業の活性化に取り組み、2025年時点で15.2兆円規模にまで成長させることを目標に定めている。具体的には「スタジアム・アリーナ改革」「スポーツ経営人材の育成・活用」「スポーツ・ツーリズムの推進」「海外展開事業」「スポーツ実施率の向上」、そして「スポーツオープンイノベーションの推進」という6つの施策を実施している。スポーツ産業が15.2兆円規模にまで成長するとどのようなことになるのか。津々木氏は次のように説明する。

津々木 晶子(つつき・あきこ)氏。スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付産業連携係長。鹿屋体育大学を卒業後、慶應義塾大学大学院システムデザイン・ マネジメント研究科修士課程修了、博士課程単位所得退学。日本体育協会(現日本スポーツ協会)、ソシオ成岩スポーツクラブ、鹿屋体育大学東京サテライトキャンパスの勤務を経て2015年10月より現職。スポーツ産業の成長促進事業(スタジアム・アリーナ改革推進事業、地域の指導者を主体としたスポーツエコシステム構築推進事業等)に従事。

津々木 「日本のスポーツ産業が成長し、15兆円規模にまでなると、スポーツ環境は改善され、スポーツ参画人口も増えることになります。そうすると、スポーツ市場はさらに拡大していくことになり、好循環が生まれていくのです」

 スポーツの成長産業化は、日本政府の目玉政策の一つになっている。「日本再興戦略2016」や「未来投資戦略2017、2018」といった閣議決定された資料の中でもスポーツの重要性がうたわれている。

 だが、従来のスポーツ業界だけでは、これ以上の成長を実現することは難しく、だからこそ他産業との連携が必要になってくる。では、スポーツはどのような産業と結びつくべきなのか。津々木氏は「一見遠い産業との融合がスポーツビジネスを拡大させる可能性がある」と指摘する。

津々木 「スポーツと他産業をつなげて市場を拡大していきたいと考えていますが、より遠いと思われるような産業とスポーツが融合することで、ビジネスとしてより拡大する可能性が高まると感じています。これまでにもスポーツはツーリズムや教育といったものと融合してきましたが、今後は医療や健康、あるいは金融や保険といった業界とも融合していくことが可能でしょう」

 こうした思いから、スポーツ庁はスポーツオープンイノベーションを推進しようとしているのである。