「eスポーツ元年」と言われた2018年。コンサルティング会社のKPMGコンサルティングは5月に「eSportsアドバイザリーサービス」の提供を開始した。これはeスポーツに参入したいと考える企業や大会運営団体等を対象に、ガバナンスやビジネスモデルの構築、マネジメント体制の構築などを支援するサービスだ。これまでゲームやeスポーツと関わりがなかった同社が、なぜeスポーツビジネスを推進しようとしているのか。そしてeスポーツ発展のポイントはどこにあると考えているのか。同サービスを展開するヒョン・バロ氏1と園田玲於氏に話を聞いた。

*1 バロ氏は1月26日に開催されるスポーツビジネスイベント「SAJ2019」で講演予定。

既存スポーツとの連携がイメージアップに不可欠

――まず、KPMGがeスポーツに関わるようになったきっかけを教えてください。

KPMGコンサルティング シニアマネジャーのヒョン・バロ氏

バロ 私は韓国出身なのですが、韓国では1990年代に「PCバン」という、日本でのインターネットカフェのようなものが流行し、日本よりいち早くオンラインゲームやeスポーツが盛り上がっていました。その後、2017年に来日してKPMGコンサルティングに入社したのですが、日本ではまだeスポーツが盛り上がっていないことに気づいたのです。そこで「これはチャンスだ」と考え、当時の上司とともにeスポーツに関する社内勉強会を開催したところ、社内の受けが良く、「これはポテンシャルがあるかもしれない」と、プロジェクト化に向けて動き出しました。

 2018年5月からは、親会社であるあずさ監査法人とも連携して「eSportsアドバイザリーサービス」を提供するようになりました。現在は私や園田を含め、5〜6名ほどを中心に活動していますが、案件によっては社内のeスポーツ好きのメンバーの力を借りて、様々な企業に対してサービスを提供しています。

――実際、2018年から日本でもeスポーツが盛り上がり始め、一般の認知度も日々高まっています。この状況をどうご覧になっていますか。

バロ ついに波が来た、という感じですね。2017年の頃とはメディアの扱いも変わりましたし、我々のサービスに対する問い合わせも増えています。ただ、マーケット自体がまだ若いので、今の段階で産業的にも盛り上がっているとは言えません。ビジネスとして成長していくためにはいくつかの課題があります。一つは、ゲームに対するネガティブな印象が強いことです。やはり「スポーツ」というよりも「エンタメ」というイメージは根強く、普及のハードルになっています。

――eスポーツ先進国である韓国や中国、北米などではそうしたイメージをどのように払拭していったのでしょうか。

バロ ポイントになるのは、既存のプロスポーツ組織との連携です。例えば米国では、NFLが「マッデンNFL18」という米エレクトロニック・アーツのアメリカンフットボールゲームを用いて「マッデンNFLクラブ・チャンピオンシップ」というeスポーツ大会を開催しています。この大会の賞金総額は1億円を超えているのですが、それくらいの規模になると投資する価値が出てきますし、何より、こうした大会に優勝した選手は、単にゲームの大会で優勝したというのではなく、スポーツのスター選手と同様に扱われるのです。

 中国でも、ある有名なeスポーツのトッププレーヤーがNBAのスター選手であるレブロン・ジェームズ氏と共にナイキの広告に起用されています。このように、既存のスポーツ組織とeスポーツが連携していくと、eスポーツに対するイメージがアップしますし、「eスポーツ=スポーツ」という認識が広まっていくのではないかと思います。

 逆の視点で言うと、日本においてゲーム業界だけでeスポーツを盛り上げていくのは難しいと感じています。特に日本では、2019年から2021年までに世界規模のメガスポーツイベントが続きますから、タイミング的にも既存スポーツ組織との連携は欠かせないでしょう。

 KPMGコンサルティングのヒョン・バロ氏は2019年1月26日、東京で開催されるスポーツビジネスイベント「SAJ2019(スポーツアナリティクスジャパン2019)」のセッション「eSports最前線~世界の現場では、何が起きているのか?!~」に登壇予定。