「来年度は送付しません」に効果あり

 同様の取り組みは、大腸がん検診に関しても行われた。東京都八王子市では、前年度に大腸がん検診を受診した人に対して、検査キットを自宅に送付することで受診を促していた。しかし、キットを送付しても実際に受診するのは約7割にとどまっており、受診率を向上させるために行動経済学を応用した。

 具体的には、2017年5月に送付したキットを同年10月時点で未使用の住民に対してランダムに2種類のハガキを送付した。それぞれ下記のような文言である。

 (い)今年度も大腸がん検診を受診すれば、来年度も便検査キットを送付します。
 (ろ)今年度に大腸がん検診を受診しなければ、来年度は便検査キットが送付されません。

(い)のハガキ(提供:福吉氏)
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(ろ)のハガキ(提供:福吉氏)
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キャンサースキャン 代表取締役 社長の福吉潤氏
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 その結果、(い)のハガキを受け取った人のうち22.7%、(ろ)のハガキを受け取った人のうち29.9%が大腸がん検診を受診したという。後者の方が受診率が高かったのは、「損失回避性に訴えたメッセージだから」と八王子市の実証に参加したキャンサースキャン 代表取締役 社長の福吉潤氏は説明する。

 従来は、検診に対するメリットを訴えるメッセージが多く用いられてきたが、むしろ“損失”に働きかけることで行動変容を促せるというわけだ。