「行動経済学」はヘルスケアの突破口になるか(page 2)

人の“性”へ訴える手法を活用した事例に見る

2018/10/10 10:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

「90%治る」と「10%治らない」は同じ?

2018年7月に開催された記者発表会の様子
クリックすると拡大した画像が開きます

 実は、この商品には「行動経済学」という考え方が応用されている。健康になれる方法を伝えても、行動に移してもらうことは難しい。そこで、「健康のために行動変容を起こしてもらう手段として行動経済学に着目した」と同社 営業企画部 上席部長代理の樋口洋介氏は話す。

 行動経済学とは、人の合理的ではない行動を分析する学問である。人の行動は心理状態に左右されるため、必ずしも合理的な行動をとるわけではない。行動経済学にのっとることで、そうした人間の“性”を踏まえて行動をコントロールできる可能性があるというわけだ。

 例えば、(1)「500円もらえる」「1000円もらって500円支払う」、(2)「この治療を受けると90%の人が治る」「この治療を受けても10%の人は治らない」は、(1)も(2)もそれぞれ同じ内容を示している。しかし、(1)ではおそらく多くの人が後者の方が損をしたと感じるだろう。そして(2)では、前者の伝え方をした方が「治療を受ける」と答える患者の割合が10%程度高くなることが、東北大学大学院 教育学研究科・教育学部 准教授の吉田沙蘭氏らが行った研究で分かっているという。

住友生命保険 営業企画部 上席部長代理の樋口洋介氏
クリックすると拡大した画像が開きます

 Vitalityの例でいえば、あらかじめ保険料を割り引いておくことで、それが上がることを回避しようとする意識が働き、「健康増進への取り組みを継続することにつながる」と樋口氏は期待する。

 こうした行動経済学の考え方自体は、かねて提唱されてきたが、2017年にRichard H. Thaler氏が行動経済学に関する研究でノーベル経済学賞を受賞したことで、再び注目が集まっている。最近では、ヘルスケア領域においてもVitalityの事例にとどまらず、行動経済学を応用しようとする事例が、にわかに目立ち始めてきている。

お知らせ

ピックアップPR

もっと見る

記事ランキング