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「幸福度」は健康経営に新風を吹き込むか

2018/07/09 11:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 「健康経営や働き方改革に関するイベントで、『幸福度』についての講演依頼が相次いでいる」――。そう語るのは、幸福学を研究する慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長で教授の前野隆司氏だ。

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長で教授の前野隆司氏
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 ここ数年で健康経営に対する企業の関心は大きく高まり、歩数イベントをはじめ従業員の体の健康を意識した取り組みが活発になっている。こうした中で、幸福度に関する講演依頼が急増しているのは、「現在の健康経営は従業員の“心の健康”の観点が抜けている」(前野氏)ことへの危機感を、多くの企業が感じているためだと同氏は見る(別掲記事「日本企業はもっと社員幸福度を重視すべき」参照)。

 健康経営はもともと、従業員の健康を維持・増進することで、企業としての生産性向上を目指すことを目的としている。これに対して最近では、幸福度と従業員の生産性、あるいは幸福度と企業の財務情報といった相関を精緻に研究する動きが出始めてきている。健康経営をさらに追求する次のステップとして、にわかに幸福度への注目が高まってきているのだ(別掲記事「社内SNSでハッピーが循環する組織を」参照)。

そもそも「幸福度」って?

 そもそも「幸福度」とは何か。幸せに対する考え方は、ある種、100人いれば100通り存在するとも言える。実際、世界では多数の研究が行われており、さまざまな定義や流派が存在する注)。例えば、ハッピーな気分を幸福と考える人もいれば、人生に満足している状態を幸福と定義する人もいる。前者は気分なので、財布をなくすなどマイナスの出来事があれば変動する可能性がある。一方後者は、より俯瞰的に捉えている状態なので、前者に比べると気分による影響を受けづらい。

注)幸せな状態を表現する言葉も、ハピネス(Happiness)やハッピー(Happy)、ウェルビーイング(Wellbeing)などが存在する。前野氏によると、これらの言葉が意味するものはそれぞれ微妙に異なっているという。英語で言うHappinessやHappyは、日本語にすると「幸せ」と一緒にされがちだが、どちらかというと気分の状態を指すため、日本語の「幸せ」よりも気軽な言葉として使われている。一方Wellbeingは、心の健康やメンタルヘルスのニュアンスが強いという。

 さまざまな考え方がある中、幸福学を研究する前野氏は、幸福度を因数分解すると4つの因子に分けられると整理している。すなわち、(1)自己実現と成長の因子(「やってみよう」と思うこと)、(2)つながりと感謝の因子(「ありがとう」と感じられること)、(3)前向きと楽観の因子(「なんとかなる」と捉えられること)、(4)独立とマイペースの因子(「あなたらしく」過ごせること)、である。幸福度が高い状態というのは、これら4つの因子が高いレベルで満たされていることだという。

 “心の健康”というと、労働者数50人以上の事業所に対して2015年12月に義務化された制度である「ストレスチェック」が存在する。しかし、「ストレスチェックは心の一面を測定しているにすぎない」と前野氏は指摘する。ストレスが高いことは一概に悪いわけではなく、一定レベルのストレスはモチベーションを高めたり没頭状態に導いたりすることもあるという。

 幸福度とストレスの違いは、「幸福度が低いと心の病を発症しやすいが、ストレスを感じているからといって心の病を発症しやすいとはいえない場合もある」(前野氏)点である。そのため、ストレスだけで心の健康を測れるというわけではない。心の健康を測るためには、幸福度とストレスの因果関係も明らかにしていく必要があるだろう。

弘前大学 副理事(研究担当)・教授/COI研究機構(医学研究科) 戦略統括の村下公一氏
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 2000項目にも及ぶ健康診断を行っていることで知られる弘前COIでも、幸福度に関するデータを取得し、他のどのような指標と関係があるのかを調査している(関連記事)。具体的には、「人間関係満足度」「気持ち・気分満足度」「生活全般満足度」「体の動き満足度」の結果が他のどういう要素に影響を受けているのか調べているという。現時点では、活力や心の健康、体の痛みなどのQOLに関する項目と幸福度が影響し合うことが分かっていると、弘前大学 副理事(研究担当)・教授/COI研究機構(医学研究科) 戦略統括の村下公一氏は語る。

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