日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第1回:可変バルブタイミング機構 エンジンの吸排気バルブ、開閉タイミングを制御」の転載記事となります。

 自動車メーカーや部品メーカーは、あらゆる方向からクルマの環境性能の効率向上に努めている。特にエンジンは、損失削減やノッキング回避による熱効率の向上が目覚ましい。そのエンジンの燃焼を制御する基幹技術となるのが「可変バルブタイミング機構」である(図1)。

図1 可変バルブタイミング機構を搭載したエンジン
ドイツDaimler社の可変バルブタイミング機構。
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 自動車で使われる4サイクルエンジンは、シリンダー内をピストンが2往復する間に吸気、圧縮、爆発、排気という4行程を行っている。この4行程の動作を支えているのが、吸排気のバルブ駆動システムだ。実際には吸気行程に入ってピストンが下降して負圧が発生する前に吸気バルブを開いておく必要があるし、吸気行程が終わってピストンが上昇し始めて圧縮行程に入っても、慣性によって実際の吸気は続いている。同様に排気側においても膨張行程が終わる前に排気バルブを開け、吸気行程に入ってから閉じるようになっている。

 吸排気の効率の良いタイミングはエンジンの回転数によって変わってくる。高回転になるほど吸気行程の時間が短くなるため、その前後となる排気行程や圧縮行程でバルブが開いている時間を長くすると充てん効率が高まるのだ。そのため従来は実用性重視の低回転型エンジン用のカムシャフトと高回転高出力型エンジンのカムシャフトでは、その作用角などに違いを与えることで最適化していた(図2)。しかし1980年代に入り、クルマの装備が充実化していくとともに、エンジンの高性能化と実用性を両立させるためにカムシャフトの特性を可変させる機構が考え出されるようになる。

図2 カムシャフトの違いによるエンジン特性
低回転型カムと高回転型カムで出力やトルク特性は異なる。両者でカムの作用角やバルブオーバーラップなどが変わるためだ。可変バルブタイミング機構を用いれば二つのカムの特性を利用できるようになる。
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 実際にはカムシャフトの作用角を変化させることは難しい(ホンダのVTECやドイツPorsche社のVarioCam Plusなどカムを切り替える構造であれば可能)ので、吸気バルブと排気バルブがともに開いている状態であるバルブオーバーラップを調整することで充てん効率を変化させることが考えられた。それが可変バルブタイミング機構が作り出された背景である。

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