日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第18回:トルクコンバーター エンジンから変速機に、流体でトルクを伝達」の転載記事となります。

 ロック・アップ・クラッチ機構は、1990年代になって登場したトルクコンバーターの直結システムである。タービンをポンプと一体化したコンバーターケースと密着させることにより、流体クラッチを介さずに動力を伝えることができる。この結果、流体クラッチとしての伝達損失はほぼ解消される。それでもATやCVTは、トルクコンバーターに常に圧送される油や、油圧によって作動する機構のために常に油圧ポンプを駆動する必要があり、MTの伝達効率には及ばない。

 最近はロックアップするエンジン回転数を下げることで燃費性能を高める傾向にある。これは加減速のダイレクト感を高める効果もあるものの、高級車にはトルクコンバーターならではの滑らかな走りが求められることから、ロック・アップ・クラッチにはスリップ・ロック・アップと呼ばれるような半クラッチの状態を含めて高度な制御が導入されている。ステップATの変速クラッチ同様、リニア・ソレノイド・バルブによる緻密な制御で、滑らかにクラッチを断続させる。

 ダンパースプリングはロック・アップ・クラッチが作動して締結する際の衝撃や加速の増減による振動、エンジンが発生する振動を吸収し、スムーズな走行感を実現するために役立っている。近年はロックアップ領域の拡大により、低速域や低回転域でロックアップするためにダンパースプリングの低剛性化や大容量化が図られている。千数百rpmという低い回転数でロックアップすると、パワートレーンの固有振動数とボディーの共振周波数が近づくため、振動が発生しやすくなるためだ。

トルクコンバーター廃止の動きも

 このロック・アップ・クラッチ機構も現在は様々な仕組みが生み出され、目的に応じて選択されている。ロックアップ時の伝達トルク容量を高めるために多板構造としたり、クラッチ板の圧着力を高めるためにサーボピストンを独立させた構造なども登場している。

図4 ロック・アップ・クラッチ一体型タービンライナー(Schaeffler社)
従来のロック・アップ・クラッチは、タービンライナーと連結するロック・アップ・ダンパーをコンバーターハウジングと圧着することで締結させるが、これはタービンライナーの外周部にロック・アップ・クラッチを組み込み、ポンプインペラー側と圧着させることで締結させる。これにより軸方向の短縮が可能になり、従来サイズのままバランサーウエイトを組み込める。
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 従来、ロック・アップ・クラッチはタービンの裏側に配置されていたが、小型軽量化のためにタービンの外周にロック・アップ・クラッチを一体化させる構造も出現した(図4)。またロックアップ時の衝撃を緩和して滑らかな走りを実現するダンパースプリングも配置や形状などが工夫され、様々な仕様が登場している。

 これらはブレードの形状やトルクコンバーターの断面形状などと同様に部品メーカーの技術ノウハウとなっている。ATを開発するメーカーの自社製だけでなく、クラッチメーカーによる開発、提供が増えている。

 ステップATでは、トルクコンバーターの代わりに多板クラッチを組み合せるケースが出ている(図5)。特に高出力エンジンを組み合せる場合などは、ロック・アップ・クラッチの容量が不足することからロック・アップ・クラッチを多板クラッチとすることで伝達トルクの容量アップを図るケースもある。

図5 トルクコンバーターの機能を多板クラッチで置き換える
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