救急医療を担う立場から、ぜひICTで実現してほしいと思うことが三つほどあります。入退院時の書類の記入作業を自動化すること、勤務時間や勤務内容をより正確に把握できるようにすること、そしてテレワークを可能にすることです。

東京女子医科大学東医療センター 救急医療科 救命救急センター 医師の赤星氏(写真:加藤 康、以下同) 
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 特に救急医療との相性が良さそうだと感じているのが、テレワークです。三次救急などでは、そもそも患者の容体がとても悪いことが多い。「対面かどうか」にはこだわっていられないのです。

セキュリティー強固なSNS、果たして導入するか…

 救急医療では基本的に、複数の医師や看護師が連携して治療に当たります。何人もの患者が搬送されてきたような場合、それぞれの患者のデータや所見から、どのような処置が必要かを的確に指示するリーダーが必要になる。こうしたリーダーの仕事は、実は病院にいなくてもできるかもしれません。例えば自宅にいながら必要な指示を与えることも可能ではないか。海外を中心に、集中治療にテレワークを活用する例がしばしば見られるのは、こうした側面に着目しているからだと思います。

 こうした仕組みを導入するに当たって、まず障害になるのはコストでしょう。ただでさえ、多くの病院がギリギリの経営を余儀なくされています。それゆえ、医療者の勤務体制も厳しい状況になっているわけです。ですから、長期的に見てそのコストが病院経営にプラスになることを目に見える形で示せるかどうかが、話を前に進めるためには重要だと思います。

 ちょうど先週、我々の病院の医局会で話題になったことがあります。私達の医局では、スタッフ同士がSNSのグループ機能で必要な情報を共有しています。悩む症例が出てきた場合などに、画像を共有したりして相談ができるので「これがないと仕事にならない」と感じるほどです。

 医局会で話が出たのは、セキュリティーがより強化されたSNSを導入するかどうかでした。導入には10万円近く必要で、一人当たりの利用料も月5000円ほどかかる。こうなると、セキュリティーが高いことが望ましいと分かっていても、「今のツールを気をつけて使い続けよう」という結論になるのが現実です。コストが切実な問題として立ちはだかる場面は少なくありません。

 ICTをうまく活用する環境があるかどうかも重要でしょう。我々の病院とは別に私が仕事をしているある医療機関では、電子カルテに医師が記入した内容を、看護師がわざわざ印刷して紙のカルテに貼っています。こうしたやり方では、ICTの導入がかえって業務量を増やしかねません。