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柔軟になってきた医療業界、できることはたくさん

山内 英子氏 聖路加国際病院 副院長 ブレストセンター長・乳腺外科部長

2018/06/22 12:45
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 これまでの議論を通じて、ICTの活用によって主に3つのことが実現できるのではないかと思いました。(1)患者情報のクラウド化、(2)医師の仕事の可視化、(3)ペーパーレス化、です。

聖路加国際病院 副院長 ブレストセンター長・乳腺外科部長の山内英子氏(写真:加藤 康、以下同)
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 (1)の患者情報のクラウド化については、タスクシェアやタスクシフティングを行うためにも、共有のプラットフォームが必要です。大規模な改革になると思いますが、国が先導してくれれば、実現できると思います。

 そこで問題になるのは、やはり情報漏れの問題でしょう。個人的には、情報は漏れて当たり前だと思っています。どんなことでも、必ずリスクは伴いますから、クレジットカードの番号なども、どこかで漏れる可能性があると思いながら過ごしています。ただし、こうしたリスクに国民は大きな不安を感じています。これは解消していかなくてはいけません。

 (2)の医師の仕事の可視化については、タスクシェアやタスクシフティングを行う前準備として、医師がどのように働いているのかを把握した方が良いと考えています。一生懸命働いている人がいる一方で、お喋りをしている時間が多い人もいるかもしれません。そうした状況を、まずはきちんとデータ化することで、説得力のあるタスクシフトを実現することができると思います。

 ただし、働いている様子を可視化しますというと、どうしても建前だけは働いているように見せる文化が根強く残っています。データを使って可視化するのは、あくまでも改善策を探るためであって、それによって評価をしたりするわけではないことはきちんと説明する必要があるでしょう。知りたいのは、ありのままの現状なのです。

 (3)のペーパーレス化は、産業界では既に進められていますが、医療界もペーパーレスにすることで、“いつでもどこでも職場”を実現できればと思っています。

 実は、先日も院内で話題になったのですが、私の診療科では、今週手術を行う患者の名前や術式などを紙に印刷して自分の行動を把握しています。この紙がないと自分の予定が分からないので、白衣のポケットに入れて持ち歩いているのです。ずっとこうした文化の中で働いてきましたが、もしも、紙を廊下に落として患者情報が漏れてしまったら大変なことになります。

 機密ゴミの取り扱いも問題です。私が経験した米国の医療機関では、機密ゴミは鍵のついた箱に捨てるのが一般的でしたが、日本の医療機関の中には、段ボールに機密ゴミを捨てているところもあります。

 こうしたことを踏まえると、紙を使うことが本当に安全なのか疑問です。クラウドなどを活用してペーパーレスにした方が、安全性を高められる面もあると思います。そうしたことを、もっと発信していかなくてはいけないと考えています。

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