医療版「JAF」をつくろう

円城寺雄介氏 佐賀県 政策部 企画課 企画担当係長

2017/06/06 08:30
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
 提案があった「医療コンシェルジュ」の仕組みは、一患者の視点からはわかりづらい印象を受けます。この仕組みによって誰がどう楽になるのか、世の中がどう変わるのかについてもう少し議論していきたいと思っています(関連記事)。

佐賀県 政策部 企画課 企画担当係長の円城寺雄介氏(写真:加藤康、以下同)
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 なぜなら、新しい仕組みを考えるときに重要なのは、わかりやすさだと考えているからです。佐賀県でドクターヘリを導入するときに、費用対効果などの膨大な資料を求められました。そこで、先進的にドクターヘリを導入していたスイスやドイツではそういった資料をどのように準備しているのか聞いたところ、「資料を用意するなんてことはしない。明らかに国民の生活を豊かにすることをしようとしているのに、どうしてそんな資料を出さなきゃいけないんだ?」と言われたのです。

 この言葉が腑に落ちたので、費用対効果の話は一切せずに「どう佐賀県に必要なのか」を説明することに終始しました。例えば、ドクターヘリがあればこれだけの命が救えるなど、わかりやすさに重点を置いたのです。

 医療コンシェルジュの話に戻ると、わかりやすく示すためには、このシステムの対象となるターゲットを絞るべきだと思っています。例えば、今後文明が進んでいけば世界のさまざまな国が行き着くのが高齢化。我が国は特に進んでいる課題先進国です。こういった背景を踏まえて、高齢者や医療の課題を解決するところに特化して考えられればと思っています。

 この仕組みの有用性の一つとして、病院にかからなくても、インターネットなどを通じてまるで病院にいるかのように医療コンシェルジュに相談できればいいなと思います。

 こう思うのには理由があります。佐賀県は、平均在院日数が2014年の統計で全国ワースト3位の多さでした。この理由をひも解くと、佐賀県の中でも山間部や周辺部に住んでいる人は、周辺に医療機関がないため不安で家に戻れないということがわかったのです。

 ただ、私を含め多くの人は、入院するよりも住み慣れた家に居たいと思うのではないでしょうか。そうすると、近くに医療機関はないけれど、近くに相談できたりサポートしたりしてくれる医療コンシェルジュの存在や機能があればいいと思うのです。人間の医師には相談しづらいことでも、“AIのお医者さん”になら相談しやすいこともあるかもしれません。

メリットにお金を払う仕組みを

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 新しいシステムを導入する際のコストの問題ですが、いっそのこと行政の事業としてではなく、お金を払って入会するとサービスが受けられる仕組みにすればいいのではないでしょうか。例えば、運転手を対象にしたJAF(日本自動車連盟)に相当するサービスです。海外では、これと似たサービスの医療版としてスイスの航空救助隊Regaなどがあります。

 加入してもらうためには、わかりやすいメリットがあるサービスを、ITで作れたらいいと思います。医療や健康、介護の分野であれば、加入者が救急搬送された際に、過去の病歴などのデータを送れるようなものはどうでしょうか。

 3回の座談会を通じて感じたのは、制度や関係者が複雑に絡み合っていて、一つひとつの問題を解決することは難しいことです。ただ、唯一の解決策と成り得る存在が、ICTやデジタルだと思っています。ひょっとしたら希望の光となるかもしれません。

 なぜこう思うのかというと、救急車にタブレット端末を配備した経験が物語っているからです。タブレット端末の導入前は、自身の最適化を考えていた救急隊や医師が、デジタルによって全体を可視化したことで「個別最適ばかりやっている場合じゃないな…」と思うようになったのです。一時的には個別最適ではなくなるかもしれないけれど、そこを我慢すると全体最適になり、この地域がもっと良くなるのではないかという雰囲気が生まれました。

 複雑に絡み合った問題を解決するうえでICTやデジタルの活用は最後のチャンスとなるでしょう。今後うまく活用していきたいと思っています(談)。

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