予兆さえ検知できれば折り紙一枚でも不穏は防げる

 予兆を捉えられれば、看護ケアによって「患者が抱えている不安を取り除いたり不満を解消したりすることで、不穏行動を防げる」と森口氏は言う。

 例えば、森口氏が病室を回っていたところ、ある患者が何度も引き出しを出し入れしていたことがあった。声を掛けると、患者が「折り紙……」とつぶやいたので折り紙を渡したところ、引き出しの出し入れは収まり、不穏行動が起きなかったという。

 恐らく、折り紙がないことで不安になっていたわけではないだろうが、何らかの不安を「引き出しを出し入れすることで表していたのだろう」と森口氏は分析する。このように、不安の根源が分からなくても、気持ちを落ち着かせたり、興味や関心を別のことにそらしたりできれば、不穏行動を防げるというわけだ。

 一点をじっと凝視している患者も、不穏行動を起こす可能性が高い。こういう患者は脳疾患などから幻視が見えていることが多いという。その場合は、「カーテンを閉めて空間を遮ったり、部屋を移動させたりして対応している」と森口氏は話す。

 夜間であれば、患者の不安や不満に対応することに加えて、足浴やアロマテラピーなどのケアを行うことによって、入眠を促している。眠ることができれば不穏行動は起こらないからだ。

 このほか、予兆のアラートが通知されることで、徘徊の予防も可能になると期待される。アラートが通知されるようになれば、不穏行動の予兆が出たタイミングで、看護師が患者のそばを歩くようにしたり、「そろそろお茶でも飲みませんか」と声を掛けて休息を促したりできる。ずっと監視しなくても、不穏行動を防げる可能性があるのだ。

 予兆検知は、医師にもメリットがある。患者が不穏行動を起こせば、看護師は医師の指示を仰ぐために昼夜を問わず連絡をしなくてはいけないが、予兆の段階で不穏行動を防ぐことができればこうした連絡が減るだろう。