お薦めトピック

“七変化する診察室”、働き方は変わったか

グッドデザイン賞を受賞した恵寿総合病院の「ユニバーサル外来」

2018/06/27 09:00
増田 克善、小谷 卓也=日経デジタルヘルス
出典: 日経メディカルOnline,2018年6月21日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

2017年秋、暮らしや社会をより良くするデザインに与えられるグッドデザイン賞を、ある「診察室」が受賞した。恵寿総合病院(石川県七尾市)が2014年に導入した「ユニバーサル外来」だ。外来診療形態を変革した大胆な取り組みが評価された。この診察室の導入は、現場の医師や看護師の働き方をどう変えたのか――。

 ユニバーサル外来は、端的に言えば「あらゆる診療科に変化する外来診察室」のこと。外来患者数に応じて柔軟に、診療科ごとの診察室数を増減させる仕組みである(関連記事)

 恵寿総合病院では、専門性の高い検査機器や特殊な診察台などが必要な眼科や耳鼻咽喉科、産婦人科などを除く内科系・外科系17科にこの仕組みを適用した。具体的には、20の診察室を本館2階の一区画に集約し、17科で共用する格好にしたのである。以前は各診察室の奥にそれぞれ設けていた処置室も一箇所にまとめ、17科全ての診療科の処置に対応できるようにした。

 患者受付も一箇所に集約しており、来院した患者は、本館1階の受付で当日の受診番号・診察室番号が印刷された受付票を受け取って2階の外来待合で待機する(写真1)。診察室への誘導は、外来待合および中待合に設置されたデジタルサイネージディスプレーに受診番号を表示し、来院するたびに変わる診察室であっても迷わないようにしている(写真2)。

写真1 ユニバーサル外来の待合。A1、A2の中待合にそれぞれ10室ずつ計20室の全科対応型の診察室が並ぶ。
写真2 ユニバーサル外来とその中待合にはデジタルサイネージディスプレーが配置され、患者が迷わないよう誘導する。

「限られた外来診察エリアを有効に利用するため、全科で共用する診察室を発想した」と話す理事長の神野正博氏。

 こうした外来診察室の刷新を検討したのは本館の改築がきっかけだったと理事長の神野正博氏は振り返る。病院本館を改築するに当たって神野氏は、将来を見据えて急性期機能をさらに充実させたいと考えていた。病室はある程度面積を確保し、手術室や放射線部門には将来の機器導入に備えたスペースを設けたい。すると、必然的に外来診察室にしわ寄せがいってしまう。もっとも、「外来だって医療需要によって求められる診療科が変わっていくし、必要な診察室数も増減する」(神野氏)。その結果、たどり着いたのが、その日の予約患者数に応じてそれぞれの診療科の場所や数を柔軟に変更できるユニバーサル外来だった。

 しかし、ユニバーサル外来の導入は、単に外来診察室の“形”を変えただけではない。そこで働く医師や看護師などの“仕事のやり方”を大きく変えることを迫った。その最たるものが、「診察室=医師のもの」という概念からの脱却だ。

 一般的に診察室はそこに割り当てられた診療科、さらにはそこを使う医師自身の“オフィス”と化していることが少なくない。多くの医学書や自分でまとめた資料、患者説明用のツールに囲まれ、診察に使う器具も自ら選んだものを常備しているだろう。

 これに対して恵寿総合病院の20の外来診察室は、基本的に患者用の椅子、診察ベッド、医師用デスク・椅子、医療秘書用デスク・椅子だけが置かれ、両デスクに電子カルテ端末が設置されているほか、血圧計や体重計など、診療科を問わず使用する器具・機器が備え付けられているのみで、いずれの部屋も同じ仕様(写真3)。それぞれの診療科に特有の器具、例えば呼吸器内科で使う指導用の吸入器などはセットにして「呼吸器内科パック」としてバックヤードに用意しておき、呼吸器内科が使用する診察室に当日の朝、置いておくように運用している(写真4)。器具にこだわりがある医師用に「〇〇先生パック」を用意することもあるという。

写真3 診察室内に設置しているのは医師用および秘書用デスク・椅子、患者用椅子、診察ベッドなどの備品だけで、20の診察室は一部を除き同じ仕様となっている。
写真4 診療科別に準備された器具・書類などが、その日に使用する診察室に朝、置かれるように運用している。

ピックアップPR

もっと見る

記事ランキング