乳癌手術でセンチネルリンパ節を同定

 乳腺外科領域では、乳癌の手術時に蛍光ガイド技術が使われている。リンパ管やリンパ節を光らせることで、センチネルリンパ節の位置を同定しているのだ。

 センチネルリンパ節は「見張りリンパ節」とも呼ばれ、リンパ管に入った癌細胞が最初に到達するリンパ節である。蛍光ガイドでセンチネルリンパ節の位置を同定し、組織を摘出して病理検査をして癌細胞があるかどうかを診断する。

「いずれは、蛍光ガイド技術を内視鏡検査や分子イメージングにも活用できるようにしたい」と話す日本蛍光ガイド手術研究会代表世話人を務める京都大の戸井雅和氏。

 従来、センチネルリンパ節の同定には、色素法とラジオアイソトープ法が用いられてきた。色素法では乳房に色素を注入して染色されたセンチネルリンパ節を同定し、ラジオアイソトープ法では放射性医薬品を注入して放射能を検出することでセンチネルリンパ節を同定する。単独または併用で用いられてきた。しかし、「色素法は感度が若干劣る場合があり、ラジオアイソトープ法は術中に撮像することが難しいという課題があった」と戸井氏は言う。

 現在は、日本乳癌学会でも、センチネルリンパ節の同定に蛍光物質ICG(インドシアニングリーン)を使用することを推奨している。乳癌診療ガイドラインの中には、「良好な同定率を示しており、実施が勧められる」と明記されている。

 具体的には、まず乳輪の近くから皮下にICGを投与する。ICGは、760~780nmの光を励起すると800~850nmの光を発光するという特性を持つ。これを使って、ICGが発する800~850nm付近の光を特異的に検出するカメラを使って術野を撮影することで、リンパ節の蛍光像を得ることができる。

写真3 MIPSの全体像(提供:京都大学附属病院)
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 手術中は、近赤外光カメラを使って、蛍光像をモニターに映し出す。内視鏡手術の場合は近赤外光カメラを搭載した内視鏡を使用し、開腹手術の場合は近赤外光カメラで術野を撮影する。

 医師は、術野の横に設置したモニターで蛍光像を見ながら手技を行う。通常モニターには、可視光カメラで撮影した可視光像と近赤外光カメラで撮影した蛍光像、可視光像に蛍光像を重ね合わせた映像、の3つの映像を同時に表示する。

 京都大学附属病院では、蛍光像をモニターに映すのではなく、術野にプロジェクションマッピングする可視光投影装置(Medical Imaging Projection System:MIPS、写真3)の開発を行っており、臨床試験で使用しているという。カメラで撮影した蛍光像を患者の臓器に直接投影するシステムで、医師がモニターに視線を移す必要をなくすことができる。臓器の動きや変形をリアルタイムで追従することも可能である。

動画1 MIPSによるセンチネルリンパ節生検の様子(提供:戸井氏)