ブロックチェーンは医療にどう活用できるのか(page 2)

2018/01/22 10:30
大下 淳一=日経デジタルヘルス
出典: 日経メディカルOnline,2018年1月18日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

ブロックチェーンは「みんなで使える記録台帳」

 ブロックチェーンとはそもそも、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物が論文で提案した仮想通貨「ビットコイン」の基盤技術。円やドルといった法定通貨は、それが流通する国の政府や中央銀行がその価値を保証している。これに対してビットコインでは、中央銀行などの特権的な管理者が存在しない。通貨としての価値を保証するのは、この通貨のあらゆる取引情報をコンピューターネットワーク上に記録し、その正しさを検証する仕組みの信頼性の高さである。これを根本から支えているのが、ブロックチェーン技術だ。

 では、ブロックチェーンの実体とは何だろうか。一言で言えば、仮想通貨の取引に関わるすべての参加者(コンピューター)が互いにその内容を共有し、正しさを検証し合える「台帳」である(図1)。

図1 ブロックチェーンの仕組み 
ブロックチェーンでは、仮想通貨のやりとりなどの取引情報をブロックと呼ばれる単位で記録していく。あるブロックの内容から決まる値(ハッシュ値)を次のブロックに書きこむことで、各ブロックが時間的な連鎖性を持つようにし、データ改ざんを困難にする。こうして取引情報を記録していく台帳は取引に参加するすべてのコンピューターが共有し、その内容の正しさを常に検証可能にしている。時間的な連鎖性と空間的な分散(並列化)という二重のメカニズムにより、ブロックチェーンに記録された情報の高い信頼性を保証する形だ
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 すべての取引情報を、ピア・ツー・ピア(P2P)と呼ばれる方式のネットワークに参加する各コンピューターがこの台帳に書きこむことを試み、PoW(Proof of Work)と呼ばれる計算競争を経て正当だと承認された内容を実際に書き込み、その内容を全コンピューターで共有していく。これによって、台帳の情報を空間的に分散管理し、改ざんや不正利用などのリスクを減らす。ある特定のコンピューターが持つ情報が失われても、ネットワーク上の他のコンピューターが管理する台帳の情報によって、もとの情報を正しく再現することが可能だ。AさんがBさんに10ビットコイン(BTC)を送金といった個々の取引に関する安全性は、公開鍵暗号と呼ばれる方式の暗号技術で守る。

 この台帳にはもう一つ、大きな特徴がある。取引情報を記録していくブロックと呼ばれる単位、いわば台帳の1ページずつが、互いに鎖のように時系列につながった構造をしているのだ。あるブロックに含まれる情報を、ハッシュ値と呼ばれる値に変換して次のブロックに書きこむことでこの連鎖構造をつくる。ビットコインでは10分ごとに新しいブロックが台帳に書きこまれ、そのたびに鎖が伸びていく。ブロックをチェーンでつなげていくこの構造が、ブロックチェーンという名前の由来だ。台帳の各記録に時間的な連鎖性を持たせ、台帳を共有する全コンピューターでそれを検証可能にすることで、改ざんを極めて困難にしている。

 このようにブロックチェーンは、ある集団の中でやりとりされる情報の正しさを、中央管理者なしにシステムの参加者が全体で保証する仕組みである。管理者が存在することによって発生する手間やコスト、安全上のリスクなどを低減できると期待されている。効率や安全性が格段に高まることで、これまでは敬遠されがちだった医療機関をまたいでの情報共有や2次利用、人手を介さない自動認証などの仕組みを医療現場で実現できるというわけだ。

 こうした仕組みの登場は、時代の要請ともいえる。医療分野のテクノロジー活用に詳しい医師で情報学研究者の沖山翔氏は、ブロックチェーン登場の背景を次のように読み解く。「現代は個人のエンパワーメントの時代。分散化や非中央集権化の動きがあちこちで生まれている。マスメディアから個人ブロガーへ、テレビからYouTubeへ、中央市場からメルカリへ、といった流れだ。こうした流れの中で、正しさを保証する存在を国や大企業などの権力からテクノロジーへ移行させるものとして、ブロックチェーンが台頭してきた」。

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