内視鏡画像からAIが腫瘍を識別、その実力は?(page 3)

国内初承認の診断支援プログラムが年内発売へ

2019/01/18 07:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
出典: 日経メディカルOnline,2019年1月17日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

腺腔パターンや血管模様を使って識別

 病変全体を様々な角度から撮影し、ほとんどの画像で腫瘍である確率が高く出力された場合は、病変を腫瘍とみなす。ただし、形や表面の構造などを踏まえて「複合的に判断することが大前提」と三澤氏は言う。

 EndoBRAINは、工藤氏のグループと名古屋大学、サイバネットシステムが共同で開発した。昭和大学横浜市北部病院など5施設から収集した10万枚の検査画像と病理検査の結果を照らし合わせて内視鏡専門医が腫瘍か非腫瘍かを1例ごとに判断し、その結果をAIに学習させた。その上で5つの医療機関で100病変を対象に行った臨床性能試験を経て今回の承認に至っている。

 腫瘍か非腫瘍かの識別には、粗さや滑らかさ、凹凸といった画像の質感を測定するテクスチャ解析を行っている。名古屋大学情報学研究科教授の森健策氏のグループが、腫瘍と非腫瘍では腺腔パターンや血管模様、細胞核の大きさが異なることを利用して、312の指標を作成。この指標をもとに、腫瘍である確率をAIが統計的に算出する。例えば、細胞の核は、正常細胞の場合は小さく見えにくいのに対して、腫瘍の場合は形がいびつで大きくなる。こうしたデータをAIに学習させることで、医師と遜色ない精度の識別を実現した。

図2●腫瘍と非腫瘍の画像比較(提供:昭和大学横浜市北部病院)
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 ただ、精度を上げるために解像度の高い画像を使うと、その分解析に時間がかかる。そのため、名古屋大では撮影した画像を適切なサイズに圧縮することで、短時間で高精度な解析を可能にしている。

 EndoBRAINを開発したグループでは現在、腫瘍・非腫瘍だけでなく、腫瘍の良悪性も識別できる次世代の診断支援ソフトウエアの開発を進めている。「腫瘍の中にも、確実に切除しなくてはいけない腫瘍と経過観察をしてもよい腫瘍がある。治療の必要がないものも含めて、それぞれを識別できるようにしたい」と工藤氏は意気込む。

 特に工藤氏が力を入れるのが、陥凹型大腸癌の識別ができるソフトウエアの開発だ。陥凹型腫瘍は、そのほとんどが癌であり、「悪性度が非常に高い」(工藤氏)。一方で陥凹型腫瘍は、わずかに皮膚がくぼむ形状をしているため、粘膜が隆起するポリープとは異なり内視鏡的診断が難しい。「いまだに大腸癌が死因上位に挙がるのは、陥凹型早期癌を見逃しているから」と工藤氏と強調する。工藤氏は世界で初めて陥凹型大腸癌を発見したことでも知られる。その知見を生かした、さらに次世代の診断支援ソフトウエアの登場にも期待したい。

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