「精液成分」に着目したサービス登場の背景は…

畜産豚の人工授精の成果を人間に

2018/01/10 08:30
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
 畜産豚の人工授精の成功率を向上させた研究成果を、人間の不妊治療に応用する――。ベンチャー企業のダンテが2017年10月に発表した郵送精液検査は、実はそんなサービスである(関連記事1)。

郵送精液検査キット
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 畜産豚の人工授精の研究は、広島大学 大学院生物圏科学研究科 教授の島田昌之氏が取り組んできたもの。同氏がこの研究で着目したのが「精液の成分」だった。

 精液の成分に注目したのは、「同じ豚から採取した精子を使っても、人工授精がうまくいく日もあればそうでない日もあった」(島田氏)ことがきっかけだった。そこで、精巣から精液に触れていない精子を取り出したところ、人工授精はほとんどうまくいったという。

 精液によって精子が変化していると考えた島田氏は、精液の成分分析を行った。その結果、良い精液とそうでない精液では121種類の成分に差が見られた。具体的には、「良い精液は精子に有酸素運動をさせ、悪い精液は精子に無酸素運動をさせている」と島田氏は話す。

(右)無酸素運動の様子、(左)有酸素運動の様子
動画提供:ダンテ

 そこで島田氏らは、どんな豚から採取した精液も良い状態にするために、人工授精に使用する希釈液を開発した。例えば、グルコースを多く含むために無酸素運動を誘発してしまう精液には、グルコースを薄めて、有酸素運動を誘発させるアミノ酸などを含ませる。この希釈液を2013年に発売して以来、全国の養豚家から人工授精の成績が良くなったという声が届いているという。

 こうした研究成果を応用したのが、ダンテの郵送精液検査サービスというわけだ。

良い精液を作るための策も提案

2017年10月にダンテが開催した記者発表会の様子
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 島田氏によると、人間の不妊治療においては精液成分に着目した検査はほとんど行われてこなかったという。現在の不妊検査は、主に精子の濃度と運動率を測っている。精液から精子だけを取り出して培養液に泳がせた状態で観察するが、無酸素運動をさせるような培養液を使用するため、短時間だけ見ると精子は激しく運動する。この様子だけを見て、「精子は良い状態」と判断されてしまうこともあるという。病院で精液検査を受けて活力があると言われたのに、人工授精や自然妊娠がなかなか成功しないのは、「精液が理由かもしれない」と島田氏は考えている。

 そこでダンテのサービスでは、自宅で採取した精液を郵送する検査キットを使うことで精液成分を分析する。これにより、子供を産む能力がどれだけあるかを測る。今後、妊活を成功させるポイントや精液を良い状態にするためにできる対策についてまとめた報告書を返却することも予定している。

ダンテ 取締役CTOで広島大学 大学院生物圏科学研究科 教授の島田昌之氏
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 同サービスはクラウドファンディングによる資金調達や検体収集を経て、2017年11月21日に公式販売サイトをオープンさせた。なお、島田氏はダンテの取締役CTOを務める。

 もちろん、繁殖能力は精子と精液がどちらも良い状態である必要がある。「精子の状態が悪いから自然妊娠が難しいという可能性も十分にある」(島田氏)。ただし、精液の組成を良くすることで、「自然妊娠の可能性や体外受精の成功率が上がる可能性がある」と同氏は見る。

 ダンテのサービスは精液の成分を測ることに特化しているが、将来的には、リクルートライフスタイルが手掛ける「Seem」のように自宅で精子の運動率や濃度を測定できるキットと連動させることも視野に入れている(関連記事2)。