技術的特異点を招く?

 そこで、従来の特化型の人工知能とはまったく別のアプローチで、動物の知能を模倣した人工知能を実現しようという潮流があります。それがAGIです注2)。映画に出てくる「人工知能を持ったロボット」を想像していただければわかりやすいでしょう。たとえば、ドラえもん、鉄腕アトム、ターミネーターの「T800」や「スカイネット」、2001年宇宙の旅の「HAL9000」などなど…枚挙にいとまがありません。それだけ人工知能は人々の想像を掻き立て、さまざまな感情に訴える存在であることがわかります。

注2)従来のAIを、古き良きAI(Good Old-Fashioned Artificial Intelligence, GOFAI)と呼ぶことがあるようですが、本稿では用いません。

 こうした”本物の”人工知能ができると、技術的特異点(Technological Singularity)が訪れると主張する人もいます。機械の知能が爆発的な進化を始め、人間が置いて行かれるようになる瞬間のことです。人間と同等以上のAGIが生まれると、そのAGIがさらに洗練されたAGIを自ら設計し、そうして生まれたAGIがさらに洗練されたAGIを設計し…というプロセスが始まるというわけです。技術的特異点がいつ、どのように始まるかのはわかりませんが、AGIはその前提条件といえるので、本連載は「技術的特異点を起こす方法」とみなせるかもしれません(図1)。

図1 技術的特異点
図は、あくまでも特異点の意味を想像してもらうためのイメージ。人工知能が次第に賢くなっていくと、いつか人間を超える瞬間があり、それ以降は人工知能が加速的に賢くなる知能の爆発が起きる、といわれています。時間軸の「2015年」は便宜上設けたものであり、縦軸横軸ともに、量的な意味はありません。横軸の始まりの部分は、(人類誕生ではなく)生命が知性を獲得した瞬間を想定しています。人間(ホモ・サピエンス)の知能は、残念ながら誕生以来ほとんど変わっていないと思われます。