今年9月に発生した北海道ブラックアウト(全域停電)。電力広域的運営推進機関の検証委員会は12月12日、発生要因と再発防止策を書き込んだ最終報告書案を了承した。検証過程では、原因究明とともに、北海道電力が復旧に向け尽力していた姿も浮かび上がった。ただ、北電の財務状況は非常に厳しい状況にある。

ブラックアウトに伴うマイナス影響は110憶円だが・・・
(写真は北海道電力本社)

 北電は11月15日、2018年9月期の決算を発表した。9月6日の北海道胆振東部地震によってブラックアウトを引き起こしたことで、今年度(2019年3月期)決算に約110億円のマイナス影響があることを明らかにした。

 110憶円の内訳は大きく3つ。地震発生後の節電による電気料金収入の減少が約20憶円、石油火力発電所の稼働増による燃料費の増加で約50億円程度、連結営業利益を押し下げる。さらに、苫東厚真発電所の復旧などで特別損失を約40億円計上する見通しだ。

 ただ、今回の大地震の影響がなくても、北海道電力の収益は苦しい状況が続いている。

 10月中旬、米国系格付会社のムーディーズは、北海道・北陸・中国の3電力会社の格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に変更した。現在の3社の格付けは「A3」だが、今後1年から1年半程度の時期に、A3よりも低い格付けに下げる可能性が高いという意味である。

 なぜムーディーズは格付けを下げる見通しを明らかにしたのか。ここでは簡単に、格付会社が最も重視する指標のひとつである「有利子負債/EBITDA」を、直近の2018年3月期について見てみよう。

 ここで、EBITDAは、「各社がその事業によって生み出すキャッシュ・フローの総額」という意味合いで使われており、税金等調整前当期純損益に支払利息と減価償却費を足し戻して算出している。事業が生むキャッシュ・フローの全額を負債返済に充てると仮定した場合、何年で返済可能な負債を抱えているかを見る指標が、この「有利子負債/EBITDA」である。

 この指標に関して、北海道・北陸・中国の電力会社3社の数値は極めて大きく、事業がキャッシュ・フローを生む力が小さいか、返すべき負債が大きいかであることを示している。

 ちなみに、関西電力・中部電力・東京電力ホールディングス(東電HD)に関して同様にこの指標を算出してみると、順に6.3、6.5、6.4となっており、表1の3社よりも明らかに数値が良い(ただし東電HDに関しては、バランスシートに反映されていない原子力発電所事故に伴う賠償・廃炉費用が多額にあることには留意が必要である)。

 格付会社が個別の会社に付与した格付けを変更すべきかを議論する際には、将来の数年間にわたって予想財務諸表を作成し、上の表に示したような財務指標がどのように変化して行くと考えられるかを検討する。

 それでは、北海道電力に関して、財務指標は今後どのように推移すると予想できるだろうか。

 上の表において数値の悪い3社の中でも、北海道電力だけは、電力システム改革開始以来、既に2度も電気料金値上げを実施している(2013年9月と2014年11月)。地域独占の時代には料金値上げは収益回復の決め手であったが、2016年4月の電力小売りの全面自由化以降は、値上げによって顧客が離脱する動きが強まった。

 資源エネルギー庁が定期的に作成している「電力小売全面自由化の進捗状況について」の9月18日付資料によれば、6月時点で特別高圧分野・高圧分野で最も顧客の離脱率が高いのは北海道エリアであり、低圧分野でも同エリアは東京・関西と並んで10%以上の顧客が離脱している。

 つまり、北海道エリアは値上げしても「水漏れ」のように顧客が他社に逃げてしまい、北海道電力の収益が高まらないという悪循環に陥っている。今後、さらなる値上げによって収益を改善することはできないと見るべきである。

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