緩やかな金利上昇で利益は吹き飛ぶ

 現状では、大手電力各社は平均して1%台前半までの有利な金利水準で資金を調達しており、多額の金融負債を抱えつつも各社とも純利益を計上できている。しかし、今後日銀が政策目標を達成し、2%の物価上昇が実現したことに伴い緩やかに金利が上昇する場合においてすら、赤字に転落してしまうほど利益水準が低い大手電力もある。

 下の図表に示す大手電力3社は、利払い前の段階の利益率が1%台、もしくは2%台であり、仮に負債の金利が平均してそれぞれ2%、もしくは3%に上昇すれば赤字となる。総括原価方式と地域独占の時代であれば、料金値上げにより確実に収益を回復できたが、全面自由化後の競争環境の変化により、さらなる値上げは一層の顧客の剥落に繋がる可能性がある。北陸電力のように、2018年度からの値上げを計画する会社もあるが、その効果は見通しにくい。

わずかな金利上昇で利益がなくなる電力会社も
利払い前純利益率が3%未満の大手電力の財務状態

 もちろん、現在は各社とも原子力発電設備に多額の安全投資をしなければならない一方で、その再稼働の時期が見通せないという、いわば例外的に不利な状況であるのは事実である。表に示した低利益の3社は、いずれも保有する原子力発電所が稼働していない。

 しかし、原子力事業に積極的とされる政権与党が衆参両院で安定多数の議席を占める中でも再稼働が進展しないという現状を踏まえれば、再稼働のみに収益回復の期待を賭けるのは難しい。仮に原子力関連の追加投資をせず、現有設備の維持更新のためだけに設備投資を絞ったとしても、償還を迎える負債の借り換えのために、今後も多額の資金調達が必要となる。

電力システム改革が求める事業と債務の再構成

 電力システム改革が進捗し、2020年4月までには送配電部門の別会社化も行われる。これは必ずしも資本関係の変更を迫るものではないが、一方で、東京電力フュエル&パワーと中部電力との間に燃料・火力発電事業の共同事業体JERAが発足するなど、業界の再編に繋がる動きも出て来ている。

 本来であれば、低金利状態が続く今のうちに、従来の垂直統合型の事業モデルを再検討し、保有する事業や設備の再構成の準備を進めるべきだ。そして、資金調達の手段に関しても、新しい事業モデルに合わせて、最適な手法の工夫を始めるべきであろう。

 しかし実際には、大手電力各社は依然として旧来の一般担保付社債の発行を続けているだけである。