にわかにブームとなっている電力のP2P取引。卒FITの太陽光発電を活用してP2P電力取引に取り組みたいという話を聞く機会は枚挙にいとまがない。P2P取引の実現技術の1つであるブロックチェーンへの関心も高い。ただ、現状の電気事業制度の下でビジネス展開しようとすると、驚くほど面倒な作業が発生する。国内外のP2P電力取引に詳しい大串康彦・エポカ代表取締役に解説してもらった。

 シェアリングエコノミーで驚異の成長を遂げたライドシェアサービスの米ウーバーテクノロジーズ(Uber)と民泊サービスの米エアビーアンドビー(Airbnb)。両者の特徴は、自動車やホテルといった資産を一切、自社で所有していないことだ。Uberの時価総額は2018年5月時点で620億ドル(約7兆円)と言われ、伝統ある自動車メーカーの米ゼネラル・モーターズの時価総額より高い。

 UberやAirbnbはプラットフォーム型ビジネスであり、従来のパイプライン型のビジネスとたびたび対比される。パイプライン型ビジネスは原料調達から製造、品質管理、販売までを自社で行い、価値を提供する。一方、プラットフォーム型ビジネスは、プラットフォームを準備し、その上で売り手と買い手をマッチングさせることで価値を提供する。

 パイプライン型ビジネスのように自社で価値の流れのすべてを管理することなく、世の中にすでにある未利用資源を供給源として提供するので、プラットフォーム型ビジネスは既存のパイプライン型ビジネスを凌駕するほど速く成長できるのである。

 そして、同じ考え方が電気の世界でも進行中だ。大資本を要する発電設備を持たず、余っている電気と需要を結びつける「電力取引プラットフォーム」という概念である。2018年11月時点で、世界中で約60社の企業が電力取引プラットフォームの開発を手がけている(著者記事参照)。

 多くの企業が、固定価格買取制度(FIT)に代表される太陽光発電への導入助成策が縮小または廃止された後に、家庭などの太陽光による余剰電力を売買できるプラットフォームを開設・運営しようとしている。

 従来は電力会社が一方的に電気を供給していたのに対し、顧客(需要家)同士で電気の供給を行うのでピア・ツー・ピア(P2P)電力取引と呼ばれる。

電気という商品の特殊性

 P2P電力取引は原理上、太陽光発電で使い切れなかった電気を同じプラットフォームの参加者に売ることができる。近所の家や同じ地域に住む家族や友人、または公共施設などに売ってもよい。地産地消を進めるためのツールとしても使えるかもしれない。

 「余った電気を近所におすそ分け」などと言うと、未来的で素敵に聞こえる。だが、現状の市場制度の下で実際にやろうとすると、そう簡単ではない。それどころかオペレーションは非常に煩雑で面倒になる。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経 xTECH登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経 xTECH登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら