欧米では新たなエネルギービジネスに商機を見て、VPP(仮想発電所:Virtual Power Plant)事業への新規参入が相次いでいる。だが、現時点で利益を確保できている事業者は皆無に近い。VPPビジネスの収益化のポイントはどこにあるのか。海外市場に詳しいアビームコンサルティングの山本英夫ダイレクター(社会インフラ・エネルギー担当)に、欧米のVPPビジネスの最新分析から、日本で成功するためのポイントを解説してもらった。

(出所:PIXTA)

 VPPは配電網にぶら下がる複数のDER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギー資源)を束ねてデマンドレスポンス(DR)を実現し、卸電力市場での取引に使う手法だ。電力システムの構造によってDRの活用方法が異なるため、VPPのビジネスモデルもその国の電力システムの形態によって変わる。

 米国の電力システムは、全米を9つのISO/RTO(System Operator / Regional Transmission Operator)と呼ばれる中立的な運営機関が、エリアごとに一括して系統運用を手がける構造となっている。

 ISO/TSOはエリア内の調整力としての火力発電を一元運用しているため、アンシラリーとしてのDRニーズがない。このため、米国のDRはピークカット目的の容量市場での活用が主流だ。

 他方、欧州の電力システムは、各国のTSO(Transmission System Operator)が送変電設備を保有。系統運用し、需給調整業務も手がける。ただし、エリア内の発電設備を一元的に運用する権限は有していないので、需給調整に必要な調整力はTSOが発電事業者などから調達する。

 このため、欧州のTSOにはDRをアンシラリーに使いたいというニーズがある。欧州で数多くのVPP事業者が参入している所以である。ちなみに日本は欧州に似た形の電力システムとなっている。ここまでは前編で説明した通りだ(「欧州と米国でまったく違う「VPPビジネス」の中身」

 では、海外ではどのようなVPPビジネスモデルが生まれているのだろうか。類型別に見ていこう。

欧米のVPPビジネスモデルは3タイプ

 現在、欧州や米国市場でVPPビジネスを提供している事業者のビジネスモデルは、大きく3つのタイプに分けられる。1つ目が、VPPビジネスが始まった当初から展開されている「標準DRアグリゲーター型」、2つ目が市場環境と顧客ニーズの変化が生み出した「顧客決定権付与型」と「統合DRアグリゲーター型」である。

 標準DRアグリゲーター型は、最もベーシックなVPPビジネスモデルだ。複数の需要家の敷地内(ビハインド・ザ・メーター)にある負荷設備や自家発電設備、蓄電池をアグリゲートし、デマンドレスポンス(DR)により「調整力」や「供給力」といったフレキリビリティを創出し、収益を獲得する。

 このビネスモデルが生まれた当初は、DRによって創出されるフレキシビリティをピーク時電源の投資代替として、主に容量市場などで活用していた。DRの応動には時間的な余裕があるため、需要家への連絡は電話やメールでも問題がなかった 。

 しかし近年、特に欧州において、需給調整における調整力としてのニーズが高まっている。アンシラリーなど調整力としてDRを使う場合には、秒単位の高速応動が必要だ。デジタル技術を駆使し、短い応動時間で調整力を創出できるDRインフラの構築がVPP事業者の差別化要素となっている。

 標準DRアグリゲーター型の代表的な事業者にベルギーのREstore社がある。REstore社は2017年11月に英国の大手エネルギー会社Centricaが買収した。

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