電力の自由化は「電力の民主化」と言い換えた方がより本質に近い――。

 電力小売全面自由化が始まった2016年4月、当時月刊誌だった本誌(2016年5月号)の当欄に、全面自由化を電力ビジネスの民主化にたとえた一文を寄せた。

 「これまで上意下達だった電力を国民自らが創り出し、消費する時代に入った。電力ビジネスに関わる参政権を得て、電力会社を選ぶ選挙権も得た。同時に自由も義務も生じた」というのが趣旨だ。

 あれから2年半近くが経った。果たして、民主化はどれほど進んだのだろうか。

 グラフ1は、東日本大震災の前後から、日本卸電力取引所(JEPX)における24時間平均と日中14時間平均(8~22時)について、それぞれの月間平均価格の推移を示した。

全面自由化後に大きくなったボラティリティ
グラフ1●24時間平均と日中14時間平均の月間平均価格の推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

全面自由化後、価格は不安定になった

 震災後の価格は3段階に分けられる。まずは、震災後の高値圏の時期だ。この時期は原子力発電所全面停止などに起因する電力不足が強く意識され、市場価格は気温や事故などに敏感に反応した。

 2014年秋に入ると世界的な原油価格の低下を背景に、市場価格はなだらかかつ顕著に下がり始めた。

 2016年4月の小売全面自由化から直近までの価格推移を見ると、原油価格がゆっくりと上昇するのに合わせて、同価格の下限が次第に切り上がっている。一方で、それ以上に市場価格が上昇するボラタイルな相場付きになっているのがわかる。全面自由化以前の方が価格の上下動は少なく安定していた。

 全面自由化後、卸電力市場では売り入札量が増え、約定量も増加した。にもかかわらず、市場価格は不安定さが増している。時間帯によっては、買い入札量が売り入札量を上回るという、全面自由化前にはめったに見られない現象が頻発したからだ。

 本来、市場は取引量が増える中で流動性が増せば価格は安定する。つまり、取引量が増えているのに、電力価格の乱高下が発生した全面自由化後の電力市場は、正しい意味で流動性が増したとは言えない。

 自由化の進捗指標の1つが市場化であるとしたら、流動性が欠如する市場は決して成功しているとは言えない。このグラフを見ても、この2年半が「電力民主化の幕開け」にふさわしいスタートだったかどうかは疑わしい。

 全面自由化当初から、予備率二重確保問題(注1)や当日余剰問題(注2)、それらの結果としての送配電部門赤字問題(注3)、さらには新電力の不足インバランス問題(注4)など市場の混乱が続いた。

注1:一般電気事業者の小売部門が全面自由化と同時に導入された計画時同時同量を遵守すべく、送配電部門とは別に予備力を確保する動き。その結果、それまで自主的取組で表明していた予備力8%以上に旧一般電気事業者が電源を抱え込むことになり、卸電力取引のスポット市場への余剰電力投入量が減った。

注2:予備率二重確保が起きている中、JEPXのスポット市場では売り玉不足が生じる一方で、実際の需給当日になると全国的に余剰インバランスが発生する現象が頻発した。

注3:当日余剰の結果、スポット価格で引き上げられて高めに設定されるインバランス料金(割高な料金)で旧一般電気事業者の送配電部門が小売部門から余剰電力の買い取りを行う事態が発生した。このため、ほぼ全国エリアで送配電部門が数か月連続で赤字に転落した。この問題は、現在も抜本的な解決を求めて資源エネルギー庁が対策を検討中。

注4:それらの一方で、市場調達に依存する新電力の側では、当日まで不足で迎える事業者が数多く出た。スポット価格より割安なインバランス料金で不足を埋める事態となり、広域機関から是正に向けた指導が発せられた。

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