6月、東京エリアと東北エリアが市場分断するという珍しい現象が発生した。普段は同じ価格がつく両エリアの価格と約定量の差が明らかに。ここから大手電力が自主的取組の一環で実施している「グロスビディング」の影響について考える。市場価格に中立と言われるグロスビディングだが、それは本当だろうか。

 6月の卸電力取引市場で興味深い現象が見られた。

 6月11~15日の5日間、東京・東北間の連系線(相馬双葉幹線)工事に関連して連系線容量が低下した結果、普段はめったに起きない東京エリアと東北エリアの間で夜間時間帯を中心に市場分断が発生した。それぞれのエリアで異なる市場価格がついたのである。

 今回はこの珍しい現象を手掛かりに、大手電力(旧一般電気事業者)が市場活性化策として実施している「グロスビディング」が市場に及ぼしている影響について考察したい。

 日本卸電力取引所(JEPX)は、市場分断が発生すると、それぞれのエリアごとの約定量を公表することになっている。そのため、普段は1つの市場を形成している東京エリアと東北エリアで、6月の5日間はそれぞれのエリアごとの約定状況が露わになった。

 グラフ1は、市場分断が発生した際の平日・夜間における東京エリアと東北エリアのそれぞれの買い約定量とエリアプライスの推移である。

 北海道と本州を結ぶ北本連系線はもともと容量が小さいため、北海道エリアは普段からほぼ恒常的に本州市場から分断している。そのため、北海道を除く東日本の市場は3つの状況に分類できる。(1)東京・中部間の市場分断がなく、大きく中部・東京・東北エリアが統合されるケース、(2)東京・中部エリア間に市場分断が発生し、東京・東北エリア間は統合されているケース、(3)東京・中部エリア間に市場分断が発生し、かつ東京・東北エリア間も分断するケースだ。

 今回のケースは(3)にあたる。グラフ1で(1)~(3)の各ケースに応じた約定量の水準を帯で示した。当然ながら、(1)>(2)>(3)の順で約定量の水準が減少していく。

市場分断で見えた東北エリア価格の動き
グラフ1●2016年6月の東京・東北エリアの約定価格と約定量

東京・東北エリアで露わになった価格差

 今回焦点を当てたいのは、(2)と(3)の違いだ。市場統合されている場合のエリア価格は、東京エリアも東北エリアも同じ青線の価格推移となる。

 しかし、市場分断が発生した(3)のケースでは、東北エリア価格は決まって橙色線の価格水準に下がるという挙動を示した。そして、市場が統合された時間帯は、東京エリア価格の水準に吸い寄せられるように価格が上昇する。

 こうした現象が生じる背景に何があるのか。

 市場分断した際には、市場参加者に提供されるJEPXの取引情報から、分断したエリアごとの約定量を知ることができる。そこで、東北エリアで約定した買い札の量は40~90万kWh/hであることが今回改めて分かった。

 これに対して、(2)のケースでは東京・東北エリアを合わせた買い約定量は600万kWh/h前後ある。その差は500万kWh/hを超えており、東北エリアと東京エリアとの約定量の比は約1対5となる。

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