東京電力ホールディングスと中部電力の燃料・火力発電事業を統合したJERA(東京都中央区)が、いよいよ本格始動した。2014年の基本合意から5年。4月1日に東電と中部電の国内火力発電事業の移管を終え、統合作業が完了した。国内に26の火力発電所を有し、発電容量で国内の約半分を占める巨大発電事業者の誕生だ。
 4月2日には、新生JERAのとしての事業計画を発表した。燃料の上流からの調達、国内のLNG(液化天然ガス)貯蔵タンク、火力発電所までのバリューチェーンが揃った。大手電力で初めて発販分離を実行したJERAの振る舞いは、電力市場の今後を左右すると言っても過言ではない。
 中部電側のキーパーソンとしてJERA設立に奔走し、この4月にJERA常務執行役員・経営企画本部長に就いた奥田久栄氏にインタビューした。

4月にJERA経営企画本部長に就いた奥田久栄氏。JERA設立への交渉で中部電力側のキーパーソンだった人物だ。

――ようやく統合を完了し、燃料調達から発電、電力・ガスの卸販売に至る一連のバリューチェーンがJERAに一元化されました。東電と中部電がJERAの設立で合意した頃は、欧州のエネルギー会社が火力発電投資で大きな利益を上げており、JERA誕生によって日本にも規模で見劣りしないエネルギー事業者が誕生することへの期待感がありました。
 ですが、統合完了まで5年の歳月がかかり、その間に世界は大きく変化しました。当時、お手本にしていた欧州の事業者は、既に事業モデルを見直して再生可能エネルギーなどの別事業に主軸を移しつつあります。こうした変化を踏まえて改めて、今回の事業計画の狙いを聞かせください。

奥田氏 まず、何を目的にJERAを作ったのかというところに、さかのぼってお話ししたいと思います。東電と中部電がJERA設立に基本合意したときに、「JERAをこういう会社にしよう」と決めました。

 それは、「グローバル市場で競争して勝てる事業体を作り、国際競争力のあるエネルギーを日本に安定的に供給するという使命を果たし、その中で利益を追求し企業価値を向上させる」というものです。両親会社の燃料事業を統合してLNGの調達量を世界最大規模にしたことや、国内火力発電の過半を持ったことは、そのための手段でしかありません。

 エネルギービジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。その中でどうやって国際競争力のあるエネルギーを日本に供給し、利益を出していくのか。新生JERAとして発表した事業計画の最大のポイントは、いま直面している変化をチャンスと捉え、ビジネスモデルを抜本的に変えることにあるのです。

 これまで電力会社のビジネスモデルは、発電所などの資産を作ればそこからチャリンと自動的にお金が入ってくるというものでした。ですが、電力需要がかつてのようには伸びなくなり、資産を増やすことが難しくなってきました。既存のビジネスモデルのままでは持続しにくいフェーズに入ったのです。

ビジネスモデルを抜本的に変える

奥田氏 今回の事業計画で新たなビジネスモデルを描くにあたり、4つの環境変化に対応しようと考えました。

 第1が皆さんご存知の通りの「グローバルレベルでのエネルギーシフト」です。化石燃料から非化石燃料、再エネへのシフトが進んでいます。また、化石燃料の中でも石炭から天然ガスへのシフトがあります。そして第2の変化が市場競争の拡大です。グローバルでは市場競争は完全に定着した流れですが、いよいよ国内でも本格化します。

 そして3つ目が、AI(人工知能)などデジタル化の動きです。自動車など他産業では既に大騒ぎになっていますが、その波はエネルギー業界にも確実にやってきます。発電所の運転や系統の制御が大きく変わる可能性があります。4つ目は、こうした変化の副産物として、電力系統の不安定化や火力需要がものすごく大きく変動すると時代がやってくることです。

 どんなビジネスモデルなら変化をチャンスに変えられるのか、議論を重ねました。その結果たどり着いたのが、燃料から発電、卸供給までの事業を「事業開発部門」「最適化部門」「O&M部門」という3つのプロフィットセンターを新設してマネジメントする方法です。このやり方なら資産の規模拡大に頼らず利益を上げることができる。非常に革新的な改革になるはずです。

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