独自路線を突き進む新電力ベンチャー、みんな電力(東京都世田谷区)。同社は昨年と今年1月に実施したシリーズBラウンドの第三者割当増資により総額11億8000万円を調達した。目を引くのは出資者の顔ぶれだ。東京放送ホールディングス(TBS)のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるTBSイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、TOKAIホールディングス、セガサミーホールディングス、丸井グループ、電通と大半が異業種だった。なぜ、異業種との連携を選んだのか。大石英司社長に聞いた。

「大きな発見があった」と語る、みんな電力・大石社長

――今回の増資は出資者の顔ぶれに驚きました。エネルギー事業を手がけるのはTOKAIのみ、他はすべて異業種です。しかも、大手エネルギー会社と縁の深い企業も名を連ねています。

大石氏 昨今、電力業界は大手電力を軸とした系列化が進んでいます。新電力ベンチャーでいうと、パネイル(東京都千代田区)が東京電力エナジーパートナーと共同出資会社を設立し、Looop(東京都台東区)が中部電力と資本業務提携しました。

 僕らも大手電力との組み方を、かねて考えてはいます。ただ、いま必要なのは、電気を買う側の志ある人たちが集まって、みんなで再生可能エネルギーの利用を増やすこと。そして、「こういう買い方をすべき」と見せていくことだと考えています。今回の増資を通して、需要家を押さえている人たちとの連合軍を作りたい。

 確かに大手エネルギー会社と縁の深い企業が、新電力ベンチャーである当社への出資を決断いただくまでの道のりは簡単ではなかったと思います。それでもご決断いただいたことは、本当にありがたく思っています。実際、異業種企業と組んでみて大きな発見がありました。

――出資者とのタッグというと、2018年末にはTBSラジオで大々的にキャンペーンを展開していましたね。

大石氏 資本業務提携を契機に、TBSラジオは昨年12月8日からAM波の基幹送信所である戸田送信所で使う電力を全量、みんな電力の法人向け再エネ100%メニュー「ENECT RE100プラン」に切り替えてくれました。

 12月8日は戸田送信所で「電力切り替えセレモニー」を開催し、僕らもお笑い芸人ナイツにいじってもらいました(笑)。

 12月2日から8日までの1週間は「みんな電力Presents Clean Power Campaign~クリーン・パワー・キャンペーン」と銘打って、10を超える番組でみんな電力の「顔のみえる電力」を取り上げてもらいました。僕と三宅(取締役事業本部長の三宅成也氏)の2人で5番組に出演しました。

 今年1月からは毎週土曜日を「クリーンサタデー」と銘打って、様々な番組の中で「あなたが聞いているラジオは○△の電気で送っています」と意識付けしてくれています。

――TBSラジオが採用した「ENECT RE100プラン」は再エネ100%をうたっていますが、どういった仕組みで提供しているのですか。どの発電所からの電気を供給しているのかを区別することは現行の電気事業法の枠組みでは難しいことです。

大石氏 ENECT RE100プランの電源構成はFIT電気と非FITの風力発電による電力で100%賄っています。さらに、FIT電気分については非化石証書(FIT)をあてることで再エネ100%としています。ベースとして使っている水力発電やバイオマス発電でトラブルが発生した場合など、やむを得ず100%にならないこともありますが、原則は再エネ100%です。

 さらに、独自開発のブロックチェーン P2P 電力取引システム「ENECTION2.0」を使い、電源のトラッキングも実施しています。具体的にはバランシンググループ内で発電量と需要量を30分単位でマッチングさせ、電力取引を行ったとして約定させます。そして、約定結果をパブリックブロックチェーン上に記録するのです。この記録によって、どの電源からどれだけ電気を調達したかを証明できます。

 事業に使う電力を再エネ100%にすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」の目標達成には、本来トラッキングが欠かせません。国内でのルール化はまだ途上ですが、ENECTION2.0を活用すればトラッキングを行うことができます。

 ENECTION2.0の商用化は今年4月からですが、TBSはトライアルに参加しているため、昨年12月の供給開始時点からトラッキングを行っています。TBSラジオは新潟県上越市の小水力発電所などを選んでいます。

 当社は事業開始当初から「顔の見える電力」というコンセプトを提唱してきました。どの発電所から電気を買っているのかを見えるようにしようという考え方です。

 現行ルールでは、電源を指定した電力供給はできません。そこで、需要家が選択した再エネ発電所に「応援金」という形で電気料金の一部をお渡してきました。今後は、ENECTION2.0を活用し、需要家が選んだ発電所から電力が送られていることを証明できるようにします。

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