もう原油は世界経済を支えられない?

 現時点では中国の原油輸入量に減少はみられない。だが、米中貿易摩擦の影響もあり、自動車販売は7~9月の3カ月連続で前年を割り込み、10月の製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)は2年ぶりの低水準となった。

 中国人民銀行(中央銀行)は10月15日、景気の落ち込みを下支えするために預金準備率を15.5%から14.5%に引き下げ、今年4回目となる金融緩和を行った。9月の不動産賃料は16%の伸びを示したという報道もあり(10月16日付けWSJ紙)、インフレを懸念すればこれ以上の金融緩和はやり辛い状況だ。

 IEAは直近のレポートの中で、現在の原油市場は、原油価格の上昇が経済成長を阻むことによって生じる「需要ピーク」と原油価格下落による「供給ピーク」の「双子のピーク」を迎えつつあると指摘している。

 問題は、この「双子のピーク」が何の要因によって起きるかだ。安い原油が潤沢にあればこうしたサイクルは起こらないことを考えれば、世界の経済成長を支えるだけの安い原油資源は、もはや存在しないということを示していることになる。

 その意味でいえば、2014年6月に発生した原油価格下落の時は、2011~2014年の3年間に及ぶ1バレル100ドル超えに経済が耐えられなくなったと言える。だが、今回の下落は瞬間的な70ドル超えに世界経済が耐えられなかったということだ。

 現時点では米国のシェールオイル掘削リグ数は微増を続けているが、1バレル50ドルを割り込めば減少に転じるだろう。ビジネスサイクルが短いシェールオイルの生産が増えるのは、需要が旺盛で価格が安定して高水準を推移している時だけだからだ。

 原油市場はいまや供給過剰ではなく、価格高騰による需要減少、つまり経済成長の減速懸念に支配されつつある。言い換えれば、世界経済の命運は、ますます中国次第となっているのだ。

大場 紀章(おおば・のりあき) エネルギーアナリスト
1979年生まれ。京都大学大学院博士後期課程(化学専攻)を単位取得退学後、トヨタグループの技術系シンクタンクであるテクノバに入社。2015年より独立し、エネルギー安全保障、次世代自動車、人工知能、データサイエンスなどの分野で幅広く調査分析を行っている。

日経 xTECH SPECIAL

What's New!

エレキ

自動車

製造

もっと見る