電力・ガス市場の現状を、「市場閉鎖(電源・顧客の囲い込み)」「内部補助による競争の歪み」「寡占的協調」の3つの懸念が存在する――。こう断じる報告書が公表された。

 電力・ガス取引監視等委員会が8月9日に公開した「競争的な電力・ガス市場研究会」の中間論点整理である。

 新電力幹部からは「他の政府委員会には見られない踏み込んだ内容」「これまで切り込めていなかった部分にも切り込んだ」といった評価が聞かれる。報告書は現時点の電力、ガス市場の問題点を列記し、それぞれに政策的な対応の必要性を説いている。

 同研究会は監視委員会事務局長の私的懇談会として2017年10月に立ち上がった。以降、今年の7月までに計9回の会議がすべて非公開で実施された。中間論点整理は10カ月にわたる議論をまとめたものである。

 研究会委員のあるメンバーは「もともとは、2020年をメドに決める大手電力の経過措置料金規制の解除に関する基準の研究が目的と聞いていた。だが、委員の間でもっと広い観点から電力・ガスの競争政策を論じる機運が高まっていった」と話す。

 研究会を構成する11人の委員は1人の弁護士を除くとすべて大学の研究者で、元公正取引委員会委員だった小田切宏行・一橋大学名誉教授を座長とし、委員の大半を経済法や産業組織論など競争政策の専門家が占めた。

 こうした経緯を反映して、報告書の内容は大きく「競争政策上の課題」と「経過措置料金規制の解除基準」の2部構成になっている。

 そして、報告書は小売市場における競争政策上の優先課題として、「長期契約」「差別対価」「セット割引」の3つを挙げた。

電源・顧客の囲い込みや「内部補助」が競争を歪めている
監視委員会が例示した競争政策上の個別課題(出所:電力・ガス取引監視等委員会)
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差別対価はガイドラインで規制の方向

 「長期契約」による顧客の囲い込みは、とりわけ都市ガスで問題視されている。

 8月2日、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで大阪ガスに立ち入り検査をした。大口顧客の複数拠点の契約を自社に一本化した場合にガス料金を割り引いていたが、一部でも解約した場合は値引き分のすべての返金(違約金)を求める契約をした疑いがあり、事実上、供給先の切り替えを制限する「拘束条件付き取引」などに当たるおそれがあると判断した。

 報告書はこうした事例を含めて、「不当に高額な違約金を伴う長期契約を締結する合理性について大いに疑問がある」とし、「需要家のためのサンクコスト(回収不能コスト)となる特別な投資を行った場合などを除けば、基本的に正当化は困難」と結論づけている。

 「差別対価」に関しては、大手電力が新電力にスイッチングしようとする顧客や公共入札を対象に極端な安値を提示し、スイッチングを阻止する事例などを挙げる。その際の電気料金は託送料金を差し引くと発電の機会費用(市場などへの販売価格)を下回るケースがある可能性を指摘している。

 そのうえで報告書は「ベース電源へのアクセスに関するイコールフッティングが確保されていない現状を踏まえると、特定の顧客に対してのみ差別的に、(新電力などが)調達可能な価格以下の水準での小売供給は競争を歪める可能性が高い。(中略)適切な規制をガイドライン等において行うことが検討される必要がある」と規制の必要性にまで踏み込んだ。

 「セット割引」も「新たな付加価値を生むことも多い」とする一方で、「例えば、旧一般電気事業者が電力とガスをセットで購入する顧客についてのみ、電気料金を大幅に割り引くことによって、ガス事業者の事業運営を困難にする可能性がある」と指摘する。セット販売を条件とした合理性に乏しい過度な割引は、欧米の規制も引き合いに出しながら、国内でも規制対象になる可能性を示唆した。

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