「再生可能エネルギー電気の表示価値が明確に規定されているのは非化石価値証書だけ。グリーン電力証書やJ-クレジットを使って再エネ電気として扱うことは、行政としては推奨しない」

 7月31日、新電力57社が集まる会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」で、再エネ電気の定義や扱いを巡って議論が交わされた。

小売電気事業者が集まる会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」の会合では再エネ電気の定義をテーマに議論した

 冒頭の発言は、国内で出回る複数の環境価値証書と再エネ電気の関係を質した新電力幹部の問いに対する、資源エネルギー庁電力基盤整備課の柿原宗一郎課長補佐の回答だ。

 非化石価値証書はこの5月から取引が始まった新たな制度だ。だが、非化石価値取引市場の立ち上がりを契機に、再エネ電気を巡る議論が錯綜し始めている。

 エネ庁が「行政としては推奨しない」としつつも、現実にはグリーン電力証書やJ-クレジットといった環境価値証書をFIT電気などと組み合わせることで、事実上の「再エネ」として販売する事例が増えている。それらの組み合わせが、再エネ利用の推進を目指す国際的イニシアティブ「RE100」の基準に照らして、再エネ利用の条件を満たす解釈できるためだ。


世界の有力企業が注目する「再エネ価値」

 現状を整理しておこう。今回の会議は柿原氏のほか、企業の温暖化対策や再エネ利用に詳しいみずほ情報総研の中村悠一郎氏、RE100のほか企業の気候変動への取り組み評価で大きな影響力を持つ国際NGO、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)日本事務局の吉岡剛シニアマネージャーの3人の専門家を招いて議論を行った。

 これまで、エネルギーを利用する企業は温暖化対策としての省エネと再エネを明確に区別してこなかったが、今後は「CO2削減価値」と「再エネ価値」を分けてとらえる企業が増えるとみずほ情報総研の中村氏は指摘した。

 COP(気候変動枠組条約締約国会議)がパリ協定などを通して大胆なCO2削減を国や企業に求める一方で、世界の有力企業が使用電力の再エネ100%化を目指すRE100のような国際イニシアティブを支持するようになり、再エネ調達自体が企業の評価軸として幅を利かすようになってきた。そのため、日本企業も国際的な潮流やサプライチェーンの中で果たす役割として、CO2削減と再エネ調達のそれぞれに対応が求められるようになるという。

 この状況は電力を販売する小売電気事業者のビジネスにも大きく影響してくる。リコーや富士通、イオンなどRE100に参加した日本企業はもとより、米アップルや米マイクロソフトなどRE100参加企業の日本法人が国内で再エネ電気の調達を増やし始めているからだ。将来的に100%を目指す中で、電力需要家が自前で再エネに投資するには限界がある。ゆえに「小売電気事業者から再エネ電気を購入する比率が増える」(みずほ情報の中村氏)ことが見込まれる。

 小売電気事業者が販売用の再エネ電気を調達する際にカギを握るのが環境価値証書だ。

 国内には現在、3つの環境価値証書が存在する。このうち、グリーン電力証書とJ-クレジット(「国内クレジット制度」と「J-VER制度」を2013年に統合)は原則、再エネの自家消費を対象にしたもので、いずれもFIT以前に立ち上がった仕組みになる。「系統電力を対象にしていないことが、電気事業法上は再エネ電気として扱わない根拠」(柿原氏)というのがエネ庁の立場だ。

 これに対して、この5月に取引が始まった非化石価値証書は、再エネや原子力の「非化石価値」を証書化したもので、もっぱら電気事業者だけが購入できる。エネルギー供給構造高度化法が電気事業者に課す排出係数削減目標(2030年時点で0.37kg-CO2/kWh)の達成や温暖化対策法に基づく販売電力の排出係数削減に使えるほか、「実質的に再エネ電気○%」といった電気のメニュー表示にも使えると「電力の小売営業に関する指針(ガイドライン)」に規定されている。

 自家消費用発電を対象としたグリーン電力証書やJ-クレジットと異なり、非化石価値証書はFITや大型水力など国内で建設された大部分の再エネが対象になる。いわば、“本命”の登場となるはずだった。

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