「(新電力の不足インバランスより)大手電力の余剰インバランスの方が問題は大きい。時間前市場に(大手から)玉が出てこないところに根本問題がある」

 7月6日に開かれた資源エネルギー庁の有識者会議(電力・ガス基本政策小委員会)。委員の大山力・横浜国立大学大学院教授はこう指摘した。

 この日、需要や供給の計画と実績のズレ(過不足)を事業者ごとに精算するインバランス料金の算定式に新たな調整項(KとL)を導入する改定案が大筋了承された。

 不足インバランスを出した事業者には現状の算定式より不足分の支払額を1kWh当たりK円増やし、余剰インバランスを出した事業者は一般送配電事業者(大手電力の送配電部門)による余剰分の買い取り金額を現状よりL円減らす。つまり、不足、余剰のいずれのインバランスに対してもペナルティ性を強める。今後、K、Lを具体的にどうするかなどを決め、2019年4月から調整項を付加した新たなインバランス料金を適用する。

 2016年4月の全面自由化を機にインバランス料金制度を刷新してから今回の改定が既に2度目になる。昨年10月の改定も計画順守のインセンティブを高める目的で、インバランス料金の上限を引き上げ、下限を引き下げるなどした。

インバランスを抑えられないインバランス料金

 しかし、「足元では、適切にインバランス抑制を図る事業者が大半を占める一方で、相当程度のインバランスを発生させている事業者もいる」(資源エネルギー庁電力産業・市場室)。今回の改定案は昨年10月の改訂後もインバランスの抑制が思うようにはかどっていない現状を踏まえたものだ。

 エネ庁が公表した2018年3月のデータからは、月間の需要規模が100GWhを下回る新電力のうち数十社が自社需要の20%以上のインバランスを出している様子が読み取れる。小規模な新電力の中には10社以上でインバランス発生率が100%というような例も見られる。このようなケースでは、需要を満たすのに必要な供給力を自社で確保せず、全量を一般送配電事業者によるインバランス補給に頼っていることが想定される。

大きな不足インバランスを出す新電力も多い(楕円)
小売電気事業者のインバランス発生状況[2018年3月](出所:資源エネルギー庁)

 エネ庁が問題視したのは、現行のインバランス料金のインバランス抑止効果だ。

 全面自由化を機に導入した現行のインバランス料金制度は、実受給時の需給調整価格を決める需給調整市場の創設(2021年)を前提に、市場による調整機能を重視する考え方で設計された。系統(送電網)全体が不足インバランス状態の時には、余剰インバランスを出した事業者はむしろ儲かるケースがあるなど、系統のバランス改善を促す機能などが織り込まれていた。

 だが、今回、人為的な調整項を入れることでペナルティの色合いは強まる。不足か余剰かを問わずインバランスを出した事業者は損失が今よりも必ず大きくなる。

 この点に関して、有識者会議のメンバーである松村敏弘東京大学教授は「(需給調整市場創設までの)あくまで暫定措置であるべき」と釘を刺し、完全なペナルティとして機能していた全面自由化前のインバランス料金に逆戻りすることへの懸念を訴えた。

 需給管理は電気事業の要だが、事業者の責任の在り方や電力の市場化との整合性については、自由化で先行する欧米でも一律ではない。国内では全面自由化に合わせて、インバランス料金は市場で決まる電気の価格の1つという考え方を採用した経緯がある。

 インバランス料金制度を所管する下村貴裕電力産業・市場室長は「(有識者会議は)保留的了承だったと受け止めている。あるべき姿ではなく、今急いでできることが暫定的に決まっただけ。インバランス料金の在り方や需給調整市場の創設に向けて議論すべきことは数多く残っている」との認識を示す。

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