実は、商品先物を所管する経済産業省商務・サービスグループは昨年12月、「電力先物市場の在り方に関する検討会」を立ち上げ、大手電力や新電力の幹部、市場取引の専門家らを交えて電力先物に求められる要件を洗い出し、4月に報告書をまとめている。

 「検討会は電力関係者の要望を吸い上げて整理した。規制改革推進会議の議論は検討会での議論も踏まえている」と、報告書をとりまとめた商務・サービスグループの戸邉千広参事官は打ち明ける。

 「電力先物市場を立ち上げるうえで最も重要なのは、売り手と買い手の双方にとって使い勝手に優れ、かつ公正で信頼性の高い取引が保証されること。市場は使われなければ意味がない。先物市場の設計や運営は電気事業者の意見が十分に反映されるべき」。戸邉参事官は検討会で電力関係者の意見をまとめた意義をこう強調する。

 検討会に参加した新電力幹部は「電力先物市場を利用した相場操縦やインサイダー取引は海外でも報告されている。現物を扱う国内の卸電力取引所でも市場監視は課題だ。TOCOMが電力先物を扱う場合も、電力先物で取引実績のある海外取引所と連携するべき」と話す。

 電気事業者の立場からは、電力先物で電力の価格を固定するだけでなく、火力発電の燃料価格の変動をヘッジしたいといったニーズも強い。海外の取引所では電力と燃料の両方の先物を扱っているケースが多い。そうした観点からも海外取引所との連携は有効な方策だろう。

 別の電力関係者からは「(1週間から数カ月先の現物を取引する)JEPXの先渡市場の使い勝手の改善も予定されている。先渡市場を活性化させてから、先物市場を整備しても遅くない」との意見も聞かれる。

 規制改革推進会議の答申は、TOCOMに対して「関係者の十分な理解を得ること」を促している。その意味では経産省の検討会の成果を織り込んだ市場設計や運営は重要な要素と言えるだろう。

 電力は先物が上場されている他の商品とは性格や特徴が大きく異なる。先物取引所としての機能に問題がなかったとしても、電力の特殊性に対する十分な配慮がなければ、電気事業者の懸念は払拭されない。

 今回、TOCOMは市場の創設を急ぎ、電力先物向けシステムの開発に注力するあまり、電力事業者との多面的な刷り合わせがおろそかになった面はないだろうか。一方で、政府側からは経営問題やクリアリングなど業務の能力に疑問符をつけられ、円滑なコミュニケーションが難しくなったという事情も垣間見える。

発起人に大手電力の参加が条件

 仮にTOCOMが電力先物上場の認可を予定通り近日中に申請すれことになれば、経産省は商品先物取引法が定める認可基準に沿って審査することになる。また、規制改革推進会議の答申は閣議決定され、経産省の認可プロセスにも反映される見通しだ。

 商品先物取引法は認可条件として、「十分な取引量が見込めること」などを規定している。一方、先物市場の認可申請には、20社の発起人を集めることが求められ、そのうち11社は電気事業者(当業者)であることが条件になる。

 経産省は、「十分な取引量」を実現する前提として、「11社の電気事業者の発起人のうち旧一般電気事業者も相当程度含まれることが要件」との見解を示している。つまり、TOCOMが認可を申請するには、複数の大手電力の賛同を取り付ける必要がある。これは、規制改革推進会議が求める「関係者の十分な理解を得ること」にも通じる。

 TOCOMの濱田社長は発起人について「調整中」と答える。だが、政府から「再検討」の答申が出されるなか、果たして条件を満たす発起人をそろえられるのか。仮に発起人をそろえられたとしても、答申を反映した審査をクリアできるとは限らない。

 電力市場の健全な発展のためにも、TOCOMは混乱を避けて“協調”の原点に立ち返るべきではないだろうか