内閣府に設置された規制改革推進会議は、経済社会の構造改革を念頭に府省をまたいで規制の在り方を審議する。今回、放送分野の新規参入などとともにエネルギー分野も取り上げられ、「ガス小売市場の競争促進」と並んで「電力先物の再検討」を答申した。

 答申は、一言で言えば、現時点では電力先物の上場主体としてTOCOMはふさわしくないと指摘している。理由は大きく、(1)電力という大きなマーケットを扱うに足る資本力や信用力の不足、(2)インサイダー取引など不公正取引対応が不十分であることの2つを挙げている。

 そして、答申は能力を補う方策として、「実績ある海外取引所との提携」や「総合取引所の創設」を挙げ、それらの検討を求めた。

 ここまで指摘されれば、いったん仕切り直しとなりそうなものだ。だが、事態は思わぬ展開を見せようとしている。

「TOCOMの説明が理解されない」

 今回の答申を踏まえた本誌の取材に対して、TOCOMの濵田隆道社長は「我々は電力先物が必要という政府の要請に沿って粛々と準備を進めてきた。ここで立ち止まる必要は感じていないし、答申は民間事業者である我々を縛るものではない。(秋口の上場を目指して)予定通り今月か来月にも電力先物の上場認可を申請する」と明言した。TOCOMはあくまで今秋の上場を目指す方針を変えない構えだ。

 TOCOMは秋口の電力先物上場を目指してシステム投資を続けてきた。今は試験の段階にある。「我々の説明が理解されないまま政府に対して出された答申」(濱田社長)を理由に、予定を変更するのは経営的にも支障があると判断したようだ。

 規制改革推進会議の議論では、TOCOMの経営状態として、単体で2008年から9期連続の赤字、連結で2015年から3期連続赤字であることが指摘された。また、取引の規模や安全性の目安となる清算機関の証拠金額(違約対策財源)は約1600億円と、米国の商品先物・金融先物取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の100分の1、国内取引所との比較でも東京証券取引所と大阪取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)の10分の1と小さい。財務体質や規模の面から、電力という市場規模の大きい財を安定的に扱えるのかが問われた。

 さらに、電力が金や石油などの国際市況商品と決定的に異なるのは、市場が国内に閉じているのに加えて、生産(発電)が人為的に管理されるため、意図的な供給調整や相場操縦が行われやすいという性格があることだ。とりわけ、非公開情報に基づくインサイダー取引は金や石油には存在しないため、TOCOMにはインサイダー取引規制や監視の経験がない。

 こうした指摘に対してTOCOMの濱田社長は、「赤字が続いているのは事実だが、システム投資の減価償却が主要因でキャッシュフロー上の問題はない。インサイダー取引対策はJEPXを監視している電力・ガス取引監視等委員会と連携することでクリアできる」と主張する。

 清算機関(クリアリングハウス)に対する指摘も、TOCOMの子会社である日本商品清算機構(JCCH)は、「米商品先物取引委員会(CFTC)や欧州証券市場監督局(ESMA)から国際基準に照らした認定や認証を取得しており、クリアリングの能力を問題視する指摘は当たらない」(濱田社長)としている。

 では、TOCOMが認可を申請すれば、電力先物市場は今秋にも立ち上がることになるのだろうか。