「(大手電力の)グループ内取引をきちんと監視すべきだ。(発電や小売りなどの)部門間で収益の付け替えなどが起きていないことを確認してほしい」

 5月18日の有識者会議(電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会)の場で、オブザーバー参加していた大手新電力幹部から念を押すような発言が飛び出した。

 有識者会議は2017年3月から、「容量市場」や「需給調整市場」など新市場や新制度の導入を検討してきた。この日、1年余の議論を集大成した「中間とりまとめ案」を採択した。現在、意見公募(パブリックコメント)しており、6月21日に締め切る。冒頭の発言は新市場の目玉の1つ、「ベースロード市場」の監視のあり方を巡る議論として提起されたものだ。

 ベースロード市場は、大手電力(旧一般電気事業者)が保有する石炭火力や大型水力、原子力といった24時間ほぼ一定の出力で稼働する電源(発電設備)を、市場機能を使って一定量を新電力に分配するもので、2019年に開設する。

 大手電力が独占時代に建設してきたこれらの電源は、現時点では新規投資のハードルが高く、「大手電力と新電力の競争力の差の根源」(新電力幹部)と考えられてきた。負荷追従を苦手とする半面、24時間変わらない需要に対しては安価な電力を供給できるのがベース電源の特徴だ。ベース電源をほとんど持たない新電力はこれまで、夜間も稼働する工場など、「負荷率」が高い設備を持つ需要家の獲得に苦戦を強いられてきた。

 大手電力が抱え込んできた安価なベース電源の一部を制度として、いわば強制的に開放することを決めた理由として、政府はベース電源利用のイコールフッティングによる競争活性化を挙げる。

市場供出価格は「内部取引価格」と同じか

 新電力の多くはベースロード市場の導入自体は歓迎している。大手電力が新電力に全電源平均価格で一部の電力を売り渡す現行の常時バックアップの制度は、ベースロード市場が有効に機能するまで維持されるため、当初は「どうころんでも損はしない」と楽観視する新電力も少なくなかった。

 だが、ここにきてベースロード市場に対する新電力の見方は厳しいものに変わってきた。冒頭の発言だけではない。「(ベースロード市場の)監視基準の詳細を事前に示してほしい」「大手電力の内部取引におけるベースロード電源の価格の適否を評価するのには時間がかかる。ベースロード市場を立ち上げてから監視を始めるのではなく、すぐにも調査を進めてほしい」といった要求が、会議に参加する複数の新電力から相次いだ。

 焦点は大手電力のベースロード市場への供出価格(売り入札価格)だ。ルールは供出価格の上限として「ベース電源の発電平均コスト」と定めたが、そこには稼働していない電源の固定費などを含むことが認められており、大手電力の算定の仕方によっては既にある常時バックアップやスポット市場に比べても安くならない可能性がある。そうなればベースロード市場で買い手がつかない事態も起きかねない。

 そうした議論や懸念を踏まえ、新市場の設計を担うエネ庁は中間とりまとめで「イコールフッティングを図る観点から、供出価格は大手電力グループ内の小売電気事業者への卸売価格と比べて不当に高い水準とならないこと」を条件として追加した。具体的な監視手法などは今後、電力・ガス取引監視等委員会と詰めていくとしている。

 これに対して複数の新電力が、中間とりまとめを採択する議論の大詰めの場で、エネ庁の方針の徹底と厳格な市場監視を執拗に迫ったのだ。