福島県楢葉町に本社を置く新電力、福島電力が電力小売りから撤退する。その実態が、日経エネルギーNextの取材で見えてきた。事業開始から半年程度で急速に契約数を伸ばしたものの、業務フローが整わず、誤請求や未請求が多発。撤退に至った。問題なのは、その撤退方法だ。不誠実な対応に混乱が広がっている。

楢葉町では除染が進められている。農地の奥には、取り除いた土壌などが入った袋が積みあがっている

 福島県楢葉町に本社を置く新電力、福島電力が電力小売りから撤退する。

 楢葉町は、東京電力・福島第1原子力発電所から半径20キロ圏内の警戒区域の端に位置する。経営トップは、楢葉町の電気工事会社である福眞を2007年に創業した眞船秀幸氏。「電力を通じて福島を活性化」をスローガンに、2017年中頃に新電力事業をスタートした。沖縄を除く全国で電力を販売しており、2017年後半に急速に事業規模を拡大した。

 2018年1月の供給量は家庭など低圧部門で1261万3000kWh、高圧で296万7000kWhの計1558万kWh。新電力で73位だった。

 だが、2018年初頭から、電気料金の誤請求や未請求、二重請求などが多発。事業開始から1年足らずで撤退となった。

 福島電力の顧客(需要家)の間には混乱が広がっている。

 福島電力は需要家への通知に先立って、4月25日に代理店などの関係者に小売電気事業からの撤退を伝える文書を送付。その後、ゴールデンウイークを前後して、需要家に対して他社への契約切り替えを促すレターを順次、発送し始めた模様だ。

 需要家向けのレターには、他の電力会社への契約切り替え手続き期日を5月21日と記している。レター発送からわずか2週間で手続きを求めるという性急さだ。ところが、5月10日時点でも福島電力のホームページには、撤退についての説明は一切、掲載されていない。

 需要家からは、「手続きが間に合わなかったら停電してしまうのではないか」「撤退するという情報を耳にしたが、何の案内もない」「コールセンターにまったく電話がつながらない」といった不安の声が聞かれる。

 福島電力は本誌の取材に対して、ホームページでの告知や、まだ案内を受け取っていない需要家への撤退の案内時期、撤退する理由や今後のスケジュールなどを含めて、「現時点では一切回答できない」という答えに終始している。

契約切り替え先は新電力Looop

 需要家向けのレターには、次のような文言がある。

 「第1弾として弊社提携先で、弊社が調べる限り電気料金が安いと定評のある『Looopでんき』をご紹介させていただきます。同封の手順書をご参照の上、下記の期日までに切り替え手続きを進めていただけますよう、宜しくお願い致します」

 福島電力は、契約切り替え先として新電力、Looop(東京都台東区)を紹介している。Looopへの切り替えに同意した需要家には今後、Looopが小売電気事業者として電力を供給。福島電力は顧客をLooopに紹介した「媒介」、いわゆる代理店になる。

 新電力が撤退などに際して顧客を他事業者に渡す方法には、事業譲渡のほか、いわゆる“名簿売り”がある。今回のケースは後者に当たる。

 レターには「第1弾として」という記載があるが、今後、他の電気事業者への切り替えを促すのかどうかは不明だ。

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