想定されていなかった都市型遠隔診療

 では、離島やへき地、慢性期疾患の患者のケースが例示に過ぎないとして、遠隔診療の対象にはどのようなものがあるだろうか。

 忙しくて通院時間が取りにくい働き盛りのビジネスパーソンを対象とする「都市型遠隔診療」も考えられる。だが、2015年8月の事務連絡が出されるまでの規制改革会議、厚生労働省、総務省での各審議会等での議論や、厚生労働省の科研費を利用した研究を見る限り、都市型遠隔診療はあまり想定されていなかったように思われる。

 このため実際のところ、どのような患者に対して遠隔診療を適用できるかについての臨床データは十分に蓄積されておらず、適用には難しい面が残っている。筆者は実際に遠隔診療を行った医師から、「『肩こり』の症状さえ様々な原因がある。対面診療でないと予想外に難しい場面が多い」という意見も聴いている。

意見が分かれる初診への適用

 初診に遠隔診療を用いることができるかについても、意見が分かれる。確かに事務連絡の3項は、初診での遠隔診療を許容する表現とも読める。しかし、総務大臣政務官と厚生労働大臣政務官の共同懇談会における、「クラウド時代の医療ICT の在り方に関する懇談会報告書(2015年11月)」の第4章では「医師と患者との間での遠隔診療については、患者の症状を診断するに当たって医師の嗅覚や触覚が重要な要素となる場合もあることなどを考えると、初診の場面では、直接の対面診療によるべきである」という指摘がある(同報告書)。

 遠隔診療通知の2(1)は初診、急性期疾患については対面診療を原則とし、2(2)は対面診療ができる場合は「対面によるべき」としている。事務連絡の3項は直接の対面診療は必須ではないとしているが、実際には、遠隔診療通知の「対面診療が原則」が厚生労働省の基本的な考え方だと考えられる。規制改革会議の医療・保険WGでも、厚生労働省の委員は、対面診療が原則であることを強調している。

 遠隔診療を導入するうえで重要な問題に診療報酬があるが、対面診療と遠隔診療への厚生労働省のこうした態度の違いが診療報酬の保険点数にも影響を与えている。遠隔診療については、初診は保険点数が認められず、2回目以降の診療で「電話等再診」の要件を満たす場合に72点(720円)が認められているに過ぎない。医師間(D to D)の遠隔病理診断、遠隔画像診断は従来から保険点数の対象となっているが、遠隔診療全体から見れば例外的なものと考えられるだろう。