「遠隔診療」の誤解を解いた事務連絡の正しい読み方(page 2)

医師法20条に抵触する条件を明確化、診療報酬には無関係

2016/03/30 00:00
落合 孝文=渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士

離島、へき地は例示に過ぎなかった

 もともと遠隔診療通知の法的位置付けは、同通知に従った遠隔診療が医師法20条(無診察診療の禁止)に違反しないと示すことにあった。その「1 基本的考え方」には、「直接の対面診療による場合と同等でないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条に抵触するものではない」とある。

 遠隔診療通知の法的位置付けを理解するために、医師法20条の条文を見てみよう。

医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

 ここでは医師が「診察」をしないで治療を行うことや処方箋を発行すること(無診療診察)を禁止している。「診察」は、問診、視診、触診、聴診、その他の手段により、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものを意味すると考えられている。医師間(D to D)の遠隔診療は、かかりつけ医などが患者と対面したうえで専門医からの情報提供を受けることになるので、医師法20条の問題とはならない。

 具体的な遠隔診療が許されるケースは、遠隔診療通知「2 留意事項」に書かれている。離島、へき地を含む直接の対面診療が困難な場合(通知の2(3)ア)、病状が安定している患者の場合(通知の2(3)イ)である。これらのケースでは、「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えない」とある。

 この2(3)アの離島、へき地のケースが独り歩きしたことが、これまで遠隔診療の要件が厳しいと理解されていた原因の一つと思われる。だが、2015年8月10日の事務連絡は、その1項で離島やへき地が例示に過ぎないことを重ねて強調している。

 通知の2(3)イは、直近まで相当期間にわたって診療を継続してきて病状が安定している慢性期疾患の患者など、遠隔診療によって療養環境の向上が認められるケースである。遠隔診療通知では、療養環境の向上が認められる遠隔診療の対象として9つのケースを別表に掲げている。事務連絡の2項は、こちらも同じく例示であることを明記している。

 ただし、遠隔診療を適用するにあたって、遠隔診療通知が患者の病状急変時等の連絡・対応体制の整備を求めていることには注意が必要である。2(3)のアとイいずれについても、遠隔診療に患者にとっての利点が認められるかどうか、臨床的な観点も含めて検証が進められていくだろう。2(4)から(9)では、その他の留意すべき事項が書かれている。

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