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薬局は“破壊的創造”を自ら仕掛けよ(page 3)

【Opinion】山本雄士氏 ミナケア 代表取締役・医師

2017/03/29 10:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス
出典: 日経デジタルヘルス特別編集版2017 薬局編,2017年3月6日 ,pp.36-41 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
破壊的イノベーションを多くの分野で牽引してきたのが、ICTだ。ヘルスケア分野でも、ICTに着眼した技術やサービスの提案が相次いでいる。ICTを活用したヘルスケアは今、社会全体を見わたすとどのような段階にあるのか。山本氏は次のように分析する。

 ICTを用いたヘルスケアは、イノベーションのフェーズで言えば、まだ育成段階にあると思います。いろいろなプレーヤーがさまざまな挑戦をしている。その中には、生き残るものもあれば淘汰されてしまうものも当然あります。

 現時点で行政に求めることがあるとすれば、それは現状ではニッチな業界にあるイノベーションに対して必要な投資を惜しまなかったり、産業の育成を妨げる規制を取り払ったりすることに尽きると言えるかもしれません。既存の大手プレーヤーを延命させるだけではイノベーションを阻害しかねません。

 イノベーションによって新しい産業を創造する過程では、まずはボリューム(規模)を稼ぐことが求められます。次に品質の担保。その後に、価格を含めた競争段階に入るわけです。では、ボリュームを稼げるようなヘルスケアのイノベーションは今、どこから生まれようとしているのでしょうか。

 専門家が集まってある場所で提供していたサービスを顧客の手元に届けるような転換に、イノベーションの1つの形があると先ほど話しました。スマートフォンやスマホアプリにもそれが当てはまります。

 従来は計算機センターで提供していたような処理を、スマートフォンやアプリがこなせる時代が来たわけです。医療もこの変化と無関係ではない。健康管理向けのスマホアプリなどが次々と出てきています。

 一方、アプリとして切り出されたものが市場ニーズを捉え新しい価値を生み出しているかどうかについては、再考が必要ではないでしょうか。

 スマホゲームを例に取れば、確かにパチンコのように特定の場所で提供されてきた娯楽が、アプリという形で手元で実現できるようになった。でもそれは、既存の産業がスマホゲームにシフトしただけで、本当の意味で新しい市場が生まれたわけではないという見方もできる。フィットネスクラブのサービスが、運動アプリで体験できるようになったという流れも同様かもしれません。

 「これがなかった時代が想像できない」という思いを多くの消費者に抱かせることに成功した時、そこにはイノベーションが生まれたと言える。でもその要素が、今さまざまな提案がされているヘルスケアアプリやウエアラブル端末に存在するかどうかは、まだ分かりません。ただ、そもそも市場がほとんど存在しないサービスをアプリという形に切り出してきただけだとしたら、成功は望めないでしょう。

 これからのサービス開発では「ヘルスケアの本質的な価値をどのような形で提示するか」が厳しく問われると思います。現在はその試行錯誤のフェーズと言えるのかもしれません。

 ヘルスケアの価値ということに関して言えば、医療関係者もサービス事業者も、これまでは“疾患に対するケア”ということにこだわりすぎてきた。健康のケアという視点が抜け落ち、疾患に対するケアにしか自らの存在価値を見いだせなくなったことに、問題があると感じています。新しい価値創造のためには、産業基盤もビジネスモデルもゼロから作りださなければならない。大変なチャレンジですが、そこに私は挑んでいくつもりです。

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