VR空間上で高齢者を運ぶ

 (4)の介護については、介護する側のシミュレーションをVR映像で行うプログラムもある。スリーディーと豊橋技術科学大学は、ベッドに横になっている要介護者を車いすに移乗させるシミュレーションができる介護訓練VRの開発を進めている。介護従事者や学生のトレーニングや、国外に日本の介護ノウハウを伝える際に使用することを想定している。

 利用者がHMDを装着すると、ベッドに横になる高齢者(要介護者)が現れる。利用者の動きは米Microsoft社のジェスチャー入力デバイス「Kinect」センサーを用いて追従し、リアルタイムの腕の動きをVR空間に映し出す。

介護訓練VRを体験している様子

 VR空間上では、高齢者の体と利用者の腕を接触させることができる。現在開発しているプログラムは実際の介護現場で行われている移乗方法とは異なるが、「高齢者を両腕と胸元の3点で支えて移乗させるもの」と同社 営業部 リーダーの青木慶氏は説明する。

介護訓練VRの映像イメージ(画像提供:スリーディー)
[画像のクリックで拡大表示]
Kinectで利用者の動きを検知し、VR映像上には利用者の腕が映し出される(画像提供:スリーディー)
[画像のクリックで拡大表示]

 しかし、VR空間上に再現した高齢者は利用者との接触は反映するものの、重さを感じることができないため、風船のように浮いてしまい、利用者も抱えているという実感が得られにくいという。そこで今後は、「高齢者の体重を感じられるようにしたい」と青木氏は意気込む。

(左)スリーディー 営業部 リーダーの大川清志氏と(右)スリーディー 営業部 リーダーの青木慶氏
[画像のクリックで拡大表示]
 そのために開発を進めているのが、力覚を再現するハプティックデバイスである。具体的には、両肘にモーターを搭載したデバイスを装着した状態で介護訓練VRを行い、利用者の体勢と高齢者の設定体重から、腕にどれだけの力がかかるかを計算する。その力分布に応じてモーターで利用者の腕を引っ張れば、VR映像と合わさってあたかも高齢者の重さが腕にかかっているように錯覚できるというわけだ。今後は、ハプティックデバイスの開発に加えて、実際の介護現場を再現したシナリオ作りを進めていくという。