今見えているのは“最初の姿”

 消費者をひきつけることに苦戦している遺伝子検査サービスだが、実はこの先、魅力的なサービスに生まれ変わるポテンシャルは決して小さくない。ゲノム解析は技術進化が最も激しい領域の一つであり、そのダイナミックな変化をサービスに取り込んでいける余地があるからだ。

 そもそも、遺伝子検査サービスは将来の発展を前提に始まったサービスともいえる。個人のゲノム情報は生涯変わらない情報であり、解析そのものは1人当たり1回で事足りてしまう。それだけでは、事業者にとってのうまみは大きくない。利用者から預かったゲノム情報から新たな価値を生み出し、それを継続性あるビジネスにつなげられるかどうかが競いどころになる。ヤフー CISO室ゲノムR&D室主務の有地正太氏は「集めたデータの価値を高め、サービス利用者にその価値を提供していく。今はそのための投資をすべき段階にある」と話している。

遺伝子検査サービスの課題と将来性を指摘する、ミレニアムパートナーズ 代表取締役の秦充洋氏
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 多くの利用者のプラットフォームになることで、サービスがより洗練され、利用者がますます増えていく――。DeNAやヤフー、楽天といったITサービス事業者は、得意とするそうした事業モデルをゲノム解析の領域にも持ち込もうとしている。「例えばLINEは『誰もが使っているから自分も参加しないと損』と思わせることに成功している。ゲノム情報を預かるサービスも、そういう存在になれるかどうかが大切だ」(ミレニアムパートナーズの秦氏)。

 そうしたビジネスモデルにつなげるための、生みの苦しみを味わっている。それが現在の姿だと見ることもできるだろう。「ゲノム解析ビジネスは“数こそが力”。米国などではそうした認識のもと、まずは大きな投資をして利用者を集めようというやり方が主流だ。日本でも赤字覚悟で値段を大幅に下げ、とにかく数を集めようという試みがあってもいいのではないか」。医療機関向けゲノム解析サービスを手掛けるVarinos(バリノス)取締役&CTOの長井陽子氏はこう指摘している。

 遺伝子検査サービスの真価は「現在分かっていることだけでは語れない。ゲノム解析技術の急速な進化を前提に、未来に目を向ける必要がある」。ジーンクエストの高橋氏はこう訴える。遺伝子検査サービスの現状は、ゲノム解析をめぐってこれから生まれてくるさまざまなビジネスの“最初の姿”にすぎないのかもしれない。

 現在の遺伝子検査サービスの先に待ち構えている未来とは、どのようなものか。次回の「中編」ではそれを具体的に読み解いていこう。