福岡市の保健福祉総合計画では、「配る福祉から支える福祉」をテーマとしています。これは、従来の医療や介護制度の延長線上ではもはや仕組みを持続することができないとの危機感に基づくもので、大きく変わるための戦略を今年度末にまとめる方針です。一方、行政施策の延長ではない部分では、民間企業や大学機関とともに新しい社会システムを作っていきたいとの思いから、既に一部のプロジェクトが動き始めています。

福岡市 保健福祉局 健康先進都市推進担当部部長の中村卓也氏(写真:加藤康、以下同)
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 まずは、ICTの活用による医療・介護分野の生産性向上の取り組みです。福岡市の場合、2025年の在宅医療患者数が現在の2.5倍になると推測されます。しかし、かかりつけ医を2.5倍に増やすことは不可能ですので、ICTによる遠隔診療を想定しています。深刻な問題である介護の人材不足解消にもICTやIoTの投入を考えており、そこではベンチャー企業に協力してもらいます。特区を設定し、それらベンチャーを支援する活動も行っていきます。

 次に、民間企業の力を借りながら健康づくりを推進していきます。行政側から「こんなことで困っています」といった姿勢を公にして、企業の皆さんからアイデア、新商品や新サービスを提供してもらい、オープンイノベーションプラットフォームを構築します。例として行動経済学や認知心理学の見地から“いかに楽しみながら手軽に健康になってもらうか”といったアプローチを考えました。ここではSIB(Social Impact Bond)のような方式を導入し、一部を企業にインセンティブとしてリターンできないかと模索しています。

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 さらに、これまで制度ごとにバラバラの目線で健康サービスを提供しきた反省から、市民の目線でサービスを統合します。このために「地域包括ケア情報プラットフォーム」を立ち上げました。これは住基データ、医療レセプト、介護レセプト、健診データを紐付けたもので、データを活用することでシンプルなワンストップサービスを提供していくのが狙いです。このように福祉・保健行政そのものがデータのリテラシーをより高め、データやエビデンスに基づく企画をきちんと立案し、分析していくことを仕組みとして取り入れていこうとしています。

 しかし、自治体ができることには限界があります。40歳以上の健診データ、介護保険データは採取できますが、医療に関しては国民健康保険、後期高齢者のレセプトしか採取できません。本音を言えば全てを横断し、協会けんぽや組合健保と自由にデータのやり取りができるように整備をお願いしたい。施策を進めるにあたり、ほしいデータをいつでも採取できるような仕組みを早く国に作っていただきたいと思います。

 これからの高齢者にとっては、意欲や能力に応じた活躍の場を設けることが非常に大事になってきます。福岡市では、生きがい就労、ゆるやかな創業、あるいはボランティアなどの活動を通じて、何かしら社会に貢献したいという人たちのニーズを拾い上げていきたいと考えています。来年度からは終活をテーマにした活動も始める予定です(談)。