これ本当に医師の仕事?“当たり前”を一回捨てよう

黒田知宏氏 京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授

2017/02/07 19:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
 今の日本社会は、家族に頼る前提で社会基盤ができている気がします。家族の手を煩わせ、医師や看護師、介護士が信じられないほどの時間働くことでなんとか成り立っています。この状況をいずれ変えないといけません。

京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授の黒田知宏氏(写真:加藤康、以下同)
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 今まで当たり前だと思っていたことを全部疑ってかからないといけない時代になっている気がするのです。例えば、退職して老後を迎えるという人生の在り方、そして医師や看護師の役割など、すべての常識が変わりつつあります。ここで考えないといけないのは、現実に目の前にあるものを机の上に全部並べて、“当たり前”を一回捨てることだと思います。

 極端なことを言うと、医療費を減らすために効率化を図ることは当たり前というのは本当に正しいのでしょうか。そもそも医療費は本当に減らさなくてはいけないのでしょうか。そのレベルの大前提に立ち戻って考える必要があると思うのです。

 例えば、医師の役割に関しても、私自身病院の中で働いていると「これ最後に医師がやらないといけないの?」と疑問に思うことがよくあります。医師による処理や作業がとても多いのです。医師がやらなければいけないということは、結果として患者が病院を訪れなければならず、家族は付き添いや子守を強いられます。病院にいる医師ではなく、患者を訪問することができる薬剤師や看護師が、各々の専門性をもってすれば判断できる作業が多分にあると思うのです。

 ITを医療現場に導入するために、さまざまな企業が病院を訪れ、「何かニーズはないですか?」と聞かれます。正直なところニーズはありません。現場で働く先生方は日々目の前の仕事に対応することに必死ですから。「こんなものがあったらいいな」と想像している時間はないのです。

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 では、ものづくり企業はどうすればいいのでしょう。私のところに企業の方が来られた際には、「持っているシーズを現場に投げ込んでください」と話しているのです。投げ込んだ瞬間に、それは現場の先生にとってなくてはならないものに一瞬で変わるからです。

 世の中はすでに情報化を進めていく時代ではなく、情報社会です。コンピュータがなくなって生きていける人はいません。学生に携帯電話の使用を1週間禁止したらどうにかなってしまうでしょう。ITはそれほどに当たり前の存在になっています。この状況をプラットフォームとして考えながら、新たな策を探す必要があるでしょう(談)。

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