2020年の医療・健康・介護の話をしよう

武藤真祐氏を座長に議論開始、日本マイクロソフト樋口会長が挨拶

2017/02/06 04:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 日経デジタルヘルスは2017年1月27日、医療界やアカデミア、行政・地方自治体、産業界など、さまざまなキーパーソンが参加する座談会を東京都内で開催した。これは、「情報化が切り拓く、ソーシャルホスピタル実現への処方箋」(座長:医療法人鉄祐会 理事長でインテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長の武藤真祐氏、特別協力:日本マイクロソフト、インテル)と銘打つ3回の座談会の第1回。14人のパネリストが活発な議論を交わした(関連記事)

座談会の様子(写真:加藤康、以下同)
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 今回のテーマは、2020年の健康・医療・介護・社会保障制度のあるべき姿と現在のギャップ。団塊の世代が後期高齢者となり、それを支える医療・健康・介護の革新が求められる「2025年問題」を見据え、そのマイルストーンとして2020年の医療・健康・介護・社会保障制度のあり方や、そこに向けた課題について議論した。

 なお、今回参加したパネリストは次の通り。

・経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課 課長 江崎 禎英 氏
・厚生労働省 医政局 地域医療計画課 課長 佐々木 健 氏
・総務省 情報流通行政局 情報流通高度化推進室 室長 吉田 宏平 氏
・内閣官房 健康・医療戦略室 参事官 岡本 利久 氏
・佐賀県 政策部 政策課 さがデザイン担当 主査 円城寺 雄介 氏
・千葉市 保健福祉局 地域包括ケア推進課 医療政策班 主査 久保田 健太郎 氏
・福岡市 保健福祉局 健康先進都市推進担当部 部長 中村 卓也 氏
・東埼玉総合病院 地域糖尿病センター センター長 中野 智紀 氏
・京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授 黒田 知宏 氏
・日本訪問看護財団立あすか山訪問看護ステーション 統括所長 平原 優美 氏
・日本介護福祉士会 会長 石本 淳也 氏
・ファルメディコ 代表取締役社長 狭間 研至 氏
・日本マイクロソフト 医療市場担当 遠山 仁啓 氏
・インテル インダストリー事業本部 清水 由香 氏

ギャップをどう埋めていくのか

日本マイクロソフトの樋口氏
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 開催に先立ち、日本マイクロソフト 執行役員 会長の樋口泰行氏が挨拶。「ソフトウエアやコンピューティングの活躍の場があらゆる分野へ広がり、AI(人工知能)やコグニティブ、ロボティクス、IoTなどのキーワードを耳にしない日はない。これらの技術を使ったさまざまな実証が進められており、デジタル技術でどんな新しいことができるかのブレストが重要になっている。メディカルやヘルスケアの領域でも、新しいアイデアが活発に議論されることに期待している」と述べた。

 続いて始まった座談会の冒頭で、座長の武藤氏は、こう切り出した。「医療・健康・介護・社会保障制度のあるべき姿と現状には大きなギャップがある。行政やアカデミア、医療機関などから多彩なパネリストが参加するこの場では、そのギャップをどのように埋められるかを議論したい。ICTの活用を一つの軸とするが、必ずしもICTにこだわる必要はない」。

座長の武藤氏
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 その上で、医療・健康・介護・社会保障制度の「2020年のあるべき姿」「2020年への課題」というテーマに対し、パネリスト全員に事前提出してもらった回答を踏まえながらも、その場での自由な発言を促した。

「独りで生き、死ねるインフラを」

 「2020年のあるべき姿」と「2020年への課題」について、どのような議論が交わされたのか。まずは、飛び交った発言のごく一部紹介しよう。

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■「2020年のあるべき姿」についての発言の一部

「独りで生き、独りで死んでいける。望まれるのはそんな社会を支えるインフラではないか」

「医療費や社会保障費の削減を目的化してしまうと、患者の生活の価値を損なったり、社会全体を逆に不安定化させたりする懸念がある。個々人の生活の複雑さに対応できる仕組みが求められる」

「誰もが望ましい死のあり方を自ら選択できる環境を、地域の力で支えていくことが重要だ」

「IoTやAIなどの技術を生かしたい。東京五輪が開催される2020年までの期間は、そこに向けた投資ができる最後のチャンスかもしれない」

「薬局や薬剤師という資源を有効に活用すべき。ウエアラブル端末などで患者の生活データを集め、それを医師ではなくまず薬局(薬剤師)に返すといった発想があってもいい」

「患者に関するあらゆる情報を、最終的に医師が見る現在の仕組みは非効率。医師以外が対応できる情報も多く、負荷集中を回避する仕組みが求められる」

あったら便利、は不要

■「2020年への課題」についての発言の一部

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「国民皆保険制度は、現状のままでは破綻しかねない。抜本的な対策が必要だ」

「医療データの活用については、現状ではインプット情報が中心。アウトカムを活用することが今後の課題になる」

「介護人材の不足が深刻な課題だ。介護であれもこれも担うのではなく、介護の機能を分化し、ライセンスを持たない人でもその一端を担える仕組みが必要ではないか」

「制度ができると“縦割り”が発生する。制度のことだけを考えるようになり、現場から見ると実は重要でないところに力点を置いてしまったりする。そのギャップを埋めていく必要がある」

「あったら便利、という技術は不要。なければ困るというものでなければ、現場からは求められない」

 今回の各パネリストの発言内容の詳細は、本解説連載で順次、個別にお伝えしていく予定である。なお、次回(第2回)座談会では、医療・健康・介護・社会保障分野の課題をICTを活用して克服するソリューションについて、国内外の事例を挙げながら議論していく。最終的には、全3回の座談会を通じた議論を1つの提言にまとめつつ、「日経デジタルヘルス 特別編集版」に掲載する予定である。