IBM Watsonを「10年/1000億円」の創薬に

第一三共が導入

2016/02/24 04:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 「創薬の“匠(たくみ)”と呼ばれてきた研究者の英知や勘を、Watsonに持たせる。これにより、開発した薬は必ず製品化に成功するようにしたい」(第一三共 執行役員 研究開発本部長 兼 研究開発企画部長の赤羽浩一氏)――。

 2016年2月18日に日本語版の提供が始まった米IBM社のコグニティブ・コンピューティング・システム「IBM Watson」(関連記事)。日本の製薬企業として、その利用にいち早く手を挙げたのが第一三共だ。2月18日に日本IBMとソフトバンクが開催したWatson日本語版の発表会では、顧客企業の1社として登壇。新薬開発を統括する赤羽氏が、導入の狙いを語った。

第一三共の赤羽氏
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スクリーニングを効率化

 第一三共は、欧米法人では既にWatsonの利用を開始しているという。今後は日本でも、新薬開発を中心に利用していく考え。「具体的な話はこれからだが、どういうことがWatsonでできるか、担当者が熱い気持ちで検討を始めた」(赤羽氏)。

 新薬開発には失敗のリスクがつきまとう。製品化にこぎつけるまでには、莫大な時間と費用が必要だ。1製品の開発に「10年、1000億円を費やすのは当たり前」(赤羽氏)。第一三共では、売上高の約20%を新薬開発に充てているという。こうした状況から「Watsonの英知で新薬開発の成功確率を高め、医薬品を早く患者のもとへ届ける」(同氏)ことを狙う。

Watsonで創薬プロセスを効率化
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 新薬開発ではまず、100万種類に及ぶような化合物のライブラリーと、薬の標的となるタンパク質の情報から、薬の候補物質となる化合物をスクリーニングする。標的となるタンパク質に結合し、機能を発現する化合物を探索するわけだ。その上で、実際の医薬品の候補となるような誘導体を2000種類といった規模で合成し、その中から製品化できそうなものを絞り込んでいく。

医薬品情報の活用にも

 第一三共はこうした一連のサイクルの効率化に、Watsonを活用する。研究テーマの選定支援や、開発管理プロセスの支援、これらを通じた新薬開発サイクルの短縮化につなげる狙いである。

 このほか、発売済みの薬に関する情報を緊急に収集・報告するような用途にもWatsonを使う考え。「副作用に関する情報を分析し、当局に報告する」(赤羽氏)ようなケースだ。Watsonを利用することで「24時間対応が可能」(同氏)になる。

 新薬開発の効率化と、医薬品情報の有効活用。この両面で、Watsonは製薬企業の大きな力となりそうだ。