遠隔医療の着実な推進に向けた課題を整理する(page 3)

「法的課題」「臨床ガイドライン」「エビデンスの創出」を議論

2017/12/13 10:00
増田 克善=日経デジタルヘルス

年度末をめどにガイドライン(暫定版)策定

 (2)の臨床ガイドラインについては、慶応大学医学部 精神・神経科学教室の岸本泰士郎氏が、同大学を中心に実施している日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究「遠隔精神科医療の臨床研究エビデンスの蓄積を通じたガイドライン策定とデータ利活用に向けたデータベース構築」(J-INTEREST)事業の経過を報告した。

慶応大学医学部の岸本氏
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 この研究では、遠隔精神科医療を社会実装していくためのエビデンス構築として、4つの臨床研究を通じた遠隔精神科診療における診断の信頼性、有効性、安全性利用者満足度の検証を実施している。エビデンス構築の研究で「遠隔による認知機能検査の信頼性試験や強迫症・不安症の在宅患者への遠隔認知行動療法の有用性などについて、診断と治療の両場面で有用性が認められる結果を得た」(岸本氏)と成果の一部を報告した(関連記事)

 遠隔精神科医療のガイドライン(暫定版)の策定に関しては、「精神科医療の臨床、実地に即したガイドラインを目指している。精神科医療のガイドラインを参照しながら遠隔診療を実施することで質を担保し、法律にも適合した手引き書を策定していこうと薦めている」(岸本氏)と説明した。

 暫定版策定作業は、まず海外のガイドラインを参考にすべく、American Telemedicine Association(ATA)の協力を得て、翻訳・改変を進めているとし、「現在翻訳が終了し、WGにおいて日本の実情に合ったガイドライン策定に向けて議論を続けている」(岸本氏)と報告した。

 議論しているガイドラインの一部として紹介した遠隔精神科医療を実施する物理的環境に関しては、医療者・患者ともプライバシーが保たれる部屋であることが望ましく、それを双方で確認してから実施するような合意形成が必要という。また、テレビ会議システムで行うケースでは、お互いの顔、視線がまっすぐ対面できる状態を確保するといった内容になるという。

 ガイドラインの暫定版は「今年度中に策定する予定」(岸本氏)で進めている。策定する上で最も難しく、大切だと考えている点は、精神科医療にかかわる医師の合意形成であると指摘する。「特に治療を提供する精神科専門医の方々にはいろいろな考えがあり、遠隔診療に懸念を持っていることも認識している。例えば、精神科薬の誤用や野放図な販売を招くのではないか、あるいは患者の自傷行為への対応に関して議論がなされていないのではといった点が挙げられる。また、地域医療を支えている医師は、地域医療の枠を超えた医療提供が行われることを問題視している」(同氏)。

 こうした課題を踏まえ、「精神科医の方々に広く合意されるガイドラインにしていく必要がある」と岸本氏は強調した。

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