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「デジタルヘルスDAYS 2015」を振り返る

2016/10/18 12:00
日経デジタルヘルス取材班
出典: 日経デジタルヘルス特別編集版2015冬,2015年11月 ,pp.32-37 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

2016年10月19~21日に東京ビッグサイトで「デジタルヘルスDAYS 2016」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)が開催される。開幕に先立ち、前回の「デジタルヘルスDAYS 2015」(2015年9月30日~10月2日、東京ビッグサイト)の様子を振り返っていく。

オープンシアターの様子(写真:加藤 康)
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 デジタルヘルスDAYS 2015を構成した「カンファレンス」「展示」「オープンシアター」。それぞれの様子の一端を順に紹介していこう。

■カンファレンス


電子カルテは“情報のゴミ箱”?

 「ソーシャルホスピタル 社会全体が医療を担う時代へ」と題して登壇した、京都大学医学部附属病院 医療情報企画部・教授の黒田知宏氏は、電子カルテ(医療情報)のデータ整理術は航空業界に学ぶべきだと指摘した(図1)。航空機のブラックボックスは、主観的記録用と客観的記録用の2個1組で構成されている。これと同様に、電子カルテにおいても主観と客観の記録を分離すべきという主張である。

図1 京都大学医学部附属病院の黒田氏(写真:加藤 康)
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 現状の電子カルテは、保険請求のための便宜的な病名、いわゆる「レセプト病名」の記入が横行しており「全体的に嘘を含んでいる」(黒田氏)。加えて、自動記録によるデータ重複、診療業務を効率化するためのコピペ、事務方によるコメント記入、スキャンした文書の貼り付けなど未整理のまま記載されていることが多いという。「言葉は悪いが電子カルテは“情報のゴミ箱”状態とも言える」(同氏)。この状態を解決する手段が、各種のセンサーから自動的に集まってくる客観データと、主観データを分離することというわけだ。

 一方で、仮にデータがきちんと整理されたとしても、電子カルテは患者が通院してきた際の「病気のデータしか持っていない」(黒田氏)。これでは、電子カルテをビッグデータとしては活用できないと指摘する。この状況を打開するには、家庭・生活空間への医療機器導入が必須だと語る。ICTやセンサーネットワークを活用し「病院の機能そのものを社会に埋め込む必要がある」(同氏)。

 ただし、こうした時代が訪れ、家庭・生活空間での情報が勝手に集まるようになれば「その情報を処理する人(医師)は情報の洪水に溺れる」(黒田氏)との課題を指摘。機械(技術)がある程度の指標を示すことをどこまで認めるのかが重要になるとした。「医師でなければ医療を為してはならない」とする医師法第17条も含め、「法律、制度を時代に見合ったものに改正し、そこでどのようなサービスが展開できるか、多種多様な業界の方々に考えてもらう時期に来ている」と強調した。

医学を生かしたまちを作る

図2 奈良県立医科大学の細井氏(写真:加藤 康)
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 黒田氏と同様に、社会に病院の機能を埋め込むことの重要性を語ったのが、奈良県立医科大学 理事長・学長の細井裕司氏だ(図2)。同氏が提唱する「MBT(Medicine-Based Town)」について講演、奈良県立医科大学と併設する附属病院の機能を最大限に生かして“新しいコンセプトのまち”を作る考えを示した。

 具体的には、各種センサーで生体・生活状況のチェックを実施。ICTによりデータを集約、専門家がスクリーニングをしたうえで、医師が判断するような仕組みだ。「毎日病院に通うのではなく、日常的に見守りをする。患者に必要な施設をまちなかに設置するようなシステム、組織をまず作ろうと思っている」(細井氏)。実現に向け、数多くの企業が参加する共同事業体の「MBTコンソーシアム」を近く立ち上げ、新たなビジネスモデルや新製品の開発を促す考え。「(構想を)持続させるためには民間の活力が入ってこないと難しい」(細井氏)。奈良県立医科大学も、医学の知識を生かして積極的に協力する構えだ。

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