フィリップス、怒涛の異業種連携をさらに加速

企業や大学、医療機関、そして自治体…

2018/11/07 09:00
増田 克善=日経デジタルヘルス

 「我々(のビジネス)は『ヘルステック』であって、『メディテック』ではない」――。

 「ヘルステックカンパニー」を標榜するフィリップス・ジャパンの代表取締役社長である堤浩幸氏は、「デジタルヘルスDAYS 2018」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のカンファレンスの冒頭で、こう発した。

フィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏
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 同社が目指しているのは、一人ひとりに焦点を当てたヘルスケアサービスの提供により、個々人の生活の向上を実現すること。診断や治療といった医療領域にテクノロジーを融合することにとどまらず、健康な生活や予防、ホームケアなどヘルスケアプロセス全体で一連の価値連鎖を統合するためにテクノロジーを駆使する――。これが、「メディテック」ではなく「ヘルステック」という言葉を強調する理由である。

 こうした一連のヘルスケアプロセスと個人の健康状態のあらゆる段階をつなぐのが、「HealthSuiteデジタルプラットフォーム」と呼ぶ同社のクラウドモデルである。製品、ソフトウエア、サービスをつなげるエコシステムだ。「自社に閉じたクラウドでなく、さまざまな企業や組織のヘルスケア製品・サービスとつながるオープンエコシステムだ。一緒に価値を創造していけるプラットフォームの構築が、個々人に対するヘルスケアサービスを充実させ、新しい健康・医療ソリューションの創出につながる」と堤氏は強調する。

「まだ発表できないが…」

 フィリップス・ジャパンは、ヘルステックにおけるオープンエコシステムの構築に向けて、さまざまな連携を推し進めている。例えば、2017年末には異業種などとの怒涛の連携を発表した(関連記事)。その後も、新たな協業は進んでおり、「まだ発表できないが、相当数の事業者に上っている」(堤氏)という。

 医療機関・大学との連携では、国立循環器病研究センター、名古屋大学、東北大学、昭和大学の4大学それぞれとの共同研究がある。国立循環病研究センターとは、「ヘルスケアAI」に関する共同研究を始めた。AI(人工知能)を活用して脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の発症や重篤化のリスクを予測し、適切なタイミングで予防・治療するためのプラットフォーム構築を目指している(関連記事)

 名古屋大学とは、同大医学部附属病院が掲げる「スマートホスピタル」構想に関わる共同研究である(関連記事)。「“AIホスピタル”を目指した実証研究で、地域連携やe-ホームケアも視野に行政やさまざまな企業と組んで進めている」(堤氏)。

 東北大学との連携では、運動や睡眠、食事、口腔ケアなどにおいて行動変容を促し、生活パターンを向上させていくことを目指している。プロジェクトの特徴は、全学連携であること。「行動変容がキーであり、医学部だけでなく、理工学、環境科学、人間科学など全学連携でプロジェクトを推進していく」(堤氏)という。

 このプロジェクトの一環として、「PHILIPS Co-Creation Center」を設立する(関連記事)。同センターにより、医療機関や地元企業、自治体との協創を通じて、ICTなどを活用した健康・医療の新たな価値創造を目指す。「東北で創出したモデルが日本の縮図になる。日本の価値創造を世界に発信する拠点にしていく」(堤氏)とした。

自治体とのと連携も加速

 堤氏は、企業や大学、医療機関だけでなく「自治体とのパートナーシップも重要」だとし、各都市の自治体との連携も進めている。その一つが、同社が主導するヘルステックコンソーシアムだ。「県民の健康度向上、安心・安全な都市開発を目指すもので、食・農・ヘルスケア・医療に関係する地元企業や団体、自治体と協働していく」(堤氏)という。

 その第1弾として立ち上げたのが、「やまなしヘルステックコンソーシアム」である(関連記事)。同コンソーシアムでは、幾つかの課題解決テーマを設定し、ワーキンググループ活動を展開していく。生活習慣病・慢性腎臓病(CKD)予防、フレイル・サルコベニア予防、地元企業就労者の健康づくりなどがテーマとして想定されている。

 札幌市との連携では、「新さっぽろ駅周辺再開発事業」への参画を挙げた。同事業は、「健康と食文化」をコンセプトに、3つの病院の移転、大学施設の移転、産官学連携施設や商業施設、ホテル・住宅を建設する。2022年を目途にプロジェクトが進められており、2019年1月には具体化が始まるという。「食と健康の街づくりを目標とし、大和ハウスや大成建設などとコラボレーションしていく」(堤氏)。

 フィリップス・ジャパンの戦略は、まさにこうしたヘルスケア分野にかかわる大学、企業、自治体と協働するコミュニティーにおけるヘルステックの実証だ。「それゆえ、『メディテック』ではない」(堤氏)と、あらためて強調した。