花王が語るヘルスケア、1万人の内臓脂肪を測ったら

2015/10/05 16:20
大下 淳一=日経デジタルヘルス
講演する安川氏
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 石鹸メーカーから、総合ヘルスケア企業へ――。1890年(明治23年)に発売した洗顔用石鹸を事業の原点とする、花王。同社は近年、「日用品メーカー」という従来のイメージから脱皮しつつある。その中心にあるのがヘルスケア事業だ。

 「これまで医療の場にあったものが、生活の場へ移り始めた。我々にとってのチャンスがここにある」。こう語るのは、花王 エグゼクティブ・フェローの安川拓次氏。重症化してから病院で治療するのではなく、日常生活を改善して病気を予防する――。より“上流”で病気を防ごうという昨今のトレンドは、一貫して生活の場を事業の舞台としてきた同社にはまさに追い風。「ヘルシア」のような健康関連商品の開発にとどまらず、「日常の中で“気づき”を与える生活改善支援サービスを展開していく」(同氏)という。

 「デジタルヘルスDAYS 2015」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに登壇した安川氏は、「内臓脂肪に着眼した健康改善支援事業の開発」と題して講演。“メタボリックドミノ”の上流に当たる、内臓脂肪型肥満の予防を支援するサービスについて語った。


“隠れ肥満”をあばく

 花王は20年ほど前から、内臓脂肪や代謝に関する基礎研究に着手。「機能性食品と内臓脂肪」「内臓脂肪の測定方法」「脂質代謝」などをテーマに研究を進めてきた。その成果を生かして2014年4月、内臓脂肪の蓄積度と生活習慣の関係を可視化し、内臓脂肪がたまりにくいライフスタイルを提案することを目指した事業を開始した(関連記事1)。

 そのツールとして、生体インピーダンス法を使うことで、放射線被曝なしに内臓脂肪を可視化できるようにした「内臓脂肪計」をパナソニックと共同開発。2013年末に医療機器承認を取得し、パナソニックが2014年4月に発売した。

 これを使って既に、東京と大阪を中心に計1万人を超える男女の内臓脂肪を測定。さまざまな知見を得た。例えば、BMIは25未満と正常であるにもかかわらず、内臓脂肪断面積が100cm2を超えるタイプの肥満、いわゆる“隠れ肥満”の比率が男性では13.3%にも達することが分かった。BMIが正常なので「自分は大丈夫だと思っているが、実は疾病リスクが高い」(安川氏)群だ。

 女性についても、意外にも若い世代に内臓脂肪型肥満が増えていることが分かった。過剰なダイエットなどで筋肉を減らしてしまうと、リバウンド時に筋肉は増えず脂肪だけが増えて内臓脂肪型肥満になりやすいという。


内臓脂肪をためにくい献立も開発

 見える化による“気づき”の大切さも確認できた。花王社内では2010年ごろから事業所(工場)の従業員を対象に内臓脂肪を測るトライアルを開始。その結果、「測るだけで数値の改善が見られた」(安川氏)。数値が良かった従業員はやる気が増して繰り返し測定するようになり、数値が悪かった従業員は生活改善に励むようになったわけだ。

 これらの知見を基に、ライフスタイル提案プログラム「内臓脂肪ラボ『ナイボ』」を開発した。測定結果に関する詳細な説明やライフスタイル改善のアドバイスをスマートフォンなどで閲覧できるサービスだ。法人向けに提供を始め、利用企業は既に50社ほど。内臓脂肪を蓄積しにくい献立「花王健康ごはん」と内臓脂肪測定を組み合わせた生活習慣サポートなど、新たな商材の開発にもつながっている。

 2015年5月からは、弘前大学を中心とするCOIプログラムにも参加(関連記事2)。測定項目に内臓脂肪を採り入れた調査を開始した。既に速報値として青森県では「男女とも、東京や大阪に比べて内臓脂肪のスコアが悪い」(安川氏)ことが分かったという。