1. はじめに

 この5月に開催されたディスプレー分野最大の学会「SID 2016」(2016年5月22日~5月27日、米国サンフランシスコ)で話題になった、低温多結晶Si(LTPS)TFTを作製するためのエキシマレーザーアニール(ELA)装置の新技術を紹介する(関連記事1関連記事2)。ここでは、特にレーザー光源に焦点を合わせて述べる。

2. 大画面TFT液晶製造の現状と課題

(1)大面積のエキシマレーザーアニール

 現在のエキシマレーザーアニールによるLTPSの作製では、レーザービームをライン形状(ラインビーム)に形成し、アモルファスSi(a-Si)をアニールする技術が主流である。この方式では、第8.5世代(G8.5)以上の基板に対してアニールする場合、ラインビームの光学レンズ径は1.5m以上が必要になる。このため、均一なビームを形成することは困難とされている。なお、用いられているエキシマレーザーはXeCl(波長308nm)である。

 一方、レーザーのパルスエネルギーは1~2J程度の高エネルギーが求められる。しかし、エキシマレーザーでは1パルスごとの高エネルギー化と高繰り返し化(発信周波数の高周波化)の両立が難しいため、スループットの向上には限界がある。また、この方式では1スキャンで第10世代(G10)の基板に対してアニールすることは難しく、120型以上のパネルを作るためには別の方法を検討する必要がある。

(2)極小面積レーザーアニール

 極小面積レーザーアニール方式は、ガラス基板やパネルのサイズをいくら大きくしても対応できる唯一の方法である。SID 2016で堺ディスプレイプロダクト(SDP)が発表した。同社は、この技術を「Partial Laser Anneal Silicon(PLAS)」と呼んでいる。この方式のアニール装置のスループットを上げるためには、レーザーパルスの高エネルギー化と高周波数化の両立が不可欠である。

(3)ラインビーム方式とマルチレンズアレー方式

 第8世代(G8)のガラス基板までに対しては、ラインビームを使って基板上のSi膜全面を照射し、アニールする検討が進められている。近年の固体レーザーの発展が後押しとなって、YAGレーザーによるマルチレンズを使った極小アニールの開発も進んでいる。この技術ではTFTのみアニールを行うため、効率的にエネルギーを使えるプロセスとして注目を集めている。詳細は、SID 2015および2016年4月の「ファインテック ジャパン」でブイ・テクノロジーが発表した(関連記事3)。

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