1. はじめに

 ディスプレー分野で最大の学会「SID 2016」(2016年5月22日~5月27日、米国サンフランシスコ)の展示会場では、韓国LG Display社が有機ELテレビを、一方の韓国Samsung Display社はVAモードの液晶テレビをアピールしていた。今回の報告では、有機ELテレビと比べて色再現範囲に劣る液晶テレビの対抗策を紹介する。また、量子ドットによるTFT液晶パネルの色再現範囲の改善を報告する。

2. 量子ドットとは1)

 量子ドット(QD:Quantum Dot)とは、電子を微小な空間に閉じ込めるために形成した直径数~数十nmの半導体結晶である。電子をその波長とほぼ同じ大きさの空間に注入すると、3次元のどの方向にも自由に移動できないため、特定のエネルギー状態を取る。このエネルギー状態は、量子ドットの大きさを変えることで、ある程度自由に変化させることが可能なため、新しい機能を発現する素材を作ることができる。離散的なエネルギー状態はあたかも原子のエネルギー順位のように見えることから、人工原子と呼ばれることもある。

 量子ドットの種類としては、結晶成長により作製したものと、溶液プロセスにより作製したものがある。後者の量子ドットはコロイド量子ドットと呼ばれる。この量子ドットの特徴は、(1)室温・大気圧下溶液プロセスによりデバイスを作製できる、(2)材料や粒径により吸収波長を制御できる、(3)励起エネルギーを有効に活用できる、などである。

 図1に示すように、直径が1nmから10nmの量子ドットはコア/シェル構造を持ち、紫外光(例えば365nm)励起によって、粒子が小さいほど短い波長の光を蛍光し、粒子が大きいほど長い波長の光を蛍光する。コア材料としてはCdSeが代表的である。最近は、カドミウム(Cd)を含まない低毒性材料としてInPなどのIII-V族半導体やシリコン(Si)などが研究開発されている。シェル材料としてはZnSが使われることが多い。量子ドットを使った白色光の高輝度と優れた色再現性は、従来のLEDによるバックライトユニット(BLU)を代替可能な技術としても注目されている。

図1 コロイド量子ドットの構造(参考文献 1)

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